夜も眠れないほどの構造的な課題はない OpenSea CEOが講演

2022/09/22

大手NFTマーケットプレイスOpenSeaの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のDevin Finzer氏は9月21日、米ニューヨーク市で開かれた、暗号資産調査企業のMessariが主催したイベント「Mainnet 2022」で講演し「NFT市場は、夜も眠れないような構造的な課題があるとは言えない。弱気市場であっても、ブランドやSNSなどから、どれほどの興奮が起きているのかを見るのは興味深いことだ」と述べた。同社は、暗号資産の「冬の時代」の影響で取引高が急減し、人員削減などのリストラを行なっている。

Finzer氏はさらに「私たちは皆、Web3.0を信じ、それがインターネットと社会を大きく変えられると信じているからこそ、ここに集まっている。OpenSeaがやろうとしていることは、信頼とエコシステムの説明責任、Web3.0における次世代のアプリケーションを解き放つための基礎的なインフラを構築することだ」と強調した。

NFT市場が弱気相場になっていることについては、講演後の対談でこう答えた。
「リアルな市場の動きとNFTの動きについて、厳密な分析を行うのは興味深いことだが、NFTは(市場だけでなく)社会全体で使用されるケースであるというのが、正しい理論だと考えている。特に注目しているのはゲーム。NFTの取引量を時系列で見ると、冬の時代と呼ばれた時に減少したが、トランザクション数を見るとそれほど急落していないですね? つまり、価格帯が低いだけで、多くの関心と興奮を集めているということ」
「ゲーム、チケット販売、音楽など、さまざまなカテゴリーで行われている投資を見ると、すべては成熟するのには時間がかかるが、今後2~3年間で(多くの無脊椎動物が発生した古生代の)カンブリア紀のようなイノベーションの爆発が見られると、私は確信している。もちろん、時間はかかるが、確実に基礎ができつつある」

また、今後数年間の動きとして、ゲームがNFTの大きなセグメントとして台頭してくると指摘した。ゲーマーの間では、デジタル商品を購入することに慣れている層はすでに存在し、NFTを受け入れる環境が最も整っているという。

同時に「単なるデジタルアイテムではなく、まったく新しい方法で所有したり、購入したり、販売したりできるものであることを理解してもらえると思う」と述べた。

Finzer氏は同時に、3つのオープンプロトコルと標準規格を発表した。NFTのために構築されたマーケットプレイスプロトコルとなる「SeaPort」、プライマリードロップのために構築された「SeaDrop」、そして、エコシステムにおけるNFTの希少さと価値について把握するためのメタデータに関する標準である「OpenRarity」である。

同CEOはこれらの新規格を発表した背景について、こう指摘した。
「今日、SNSやeコマースのようなプラットフォームは、伝統的に非常に閉じた許可制のエコシステムとなっている。クローズドなエコシステムには、ゲートキーピングの大きな問題があり、イノベーションもプラットフォームによって異なって制限される傾向にある」
「OpenSeaは、集中型プラットフォームを許可する代わりに、オープンで分散型のエコシステムを構築することに大きな力点をおいている。オープンなので、エコシステムの基礎となるインフラを構築する上で重要な役割を果たすことが重要だ」

特にOpenRarityについては、ブランドとの連携で汎用性を持たせたことを強調した。
「NFTの問題は、コレクターが、その品物が本当に希少なものなのか、どうやって判断するかということ。独自のレアリティー(希少性)でランク付けし、並べ替えるウェブサイトがあるが、ランキングは、サイトごとに異なることが多い。そこで私たちは、独自のレアリティー・ランキング・アルゴリズムを構築し、いくつかのパートナーとともに、実際にオープンな形でこれを構築してみようと考えた」(同CEO)

津山 恵子(つやま・けいこ)プロフィール
ニューヨーク在住ジャーナリスト。
東京外国語大学卒、1988年共同通信社入社。福岡支社、長崎支局、東京経済部、ニューヨーク経済担当特派員を経て2007年に独立。Facebook(現Meta)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)、Instagram 創業者ケビン・シストロム氏、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏、YouTube共同創業者スティーブ・チェン氏、作曲家の坂本龍一氏、ジョン・ボルトン元米大統領補佐官、ジャシュ・ジェームズ米DOMO創業者などの著名経営者を単独インタビューしてきた。著書に「モバイルシフト」(アスキーメディアワークス)、「よくわかる通信業界」(日本実業出版社)など。日本外国人特派員協会(FCCJ)正会員。