【NY発】暗号関連法がアメリカ議会で目白押し

2022/08/30

昨今、暗号通貨や暗号資産のニュースは、価格の急落とリカバリーに焦点が当たっている。しかし、米フォーブスによると、アメリカでは連邦議会で暗号関連法案が昨年だけで50あまりも提案されているという。

トランプ前大統領の政権下で急速に進んだ共和党・民主党の2大政党間で、全く歩み寄りのない党派心丸出しの状況で成立しない法案が多い。特に上院では与党が50人(無党派を含む)、野党共和党が50人という構成であるため、与党側から一人でも離脱があれば法案が成立しない。しかし、暗号関連法案は、珍しく超党派の法案が多い。

上下院議員の間では党派を超えて、暗号関連法の整備が「喫緊」と認識されている表れだ。9月から本格化する審議を前に主な法案をまとめておこう。

8月初旬、上院議員 デビー・ステブナウ(民主)とジョン・ブーズマン(共和)が 提出した「デジタル商品消費者保護法案」。ビットコインとイーサリアムをデジタル商品として認識するという内容だ。法案によると、商品先物取引委員会(CFTC)に「デジタル商品」の管轄権を付与する。前述した2つの暗号通貨だけでなく、将来暗号通貨となりうる多くのデジタル商品にも適応される。

全米をカバーする連邦基準を定め、暗号商品のスポット市場のあり方を定義するという。全米に適用されるというのが、重要な点で、米国は地方分権が強いため、各州が利権や政治的信条に基づいて州法を定めてしまう可能性が高い。その前に、連邦法を制定しようという動きだ。

上院議員のシンシア・ラミス(共和)とカーステン・ジリブランド(民主)は6月、「デジタル資産の金融イノベーション」法案を提案した。法案は、多くの暗号通貨を商品として分類し、規制する政府機関を明確化し、包括的な規制を明文化した。

下院では、金融サービス委員会のマキシン・ウォーターズ委員長(民主)とパトリック・マクヘンリー委員(共和)は、USDC Coinなどステーブルコインの連邦監視を確立する法案を成立に向けて調整している。ステーブルコインは現在、米ドルや金と交換できるため、発行が銀行に限られている。法案では、銀行のほかノンバンクが、規制対象のステーブルコイン発行者になる道を提供するとしている。

米国では、暗号関連商品についての危機感が強まっている。米国財務省が、ロンダリングを理由にTornado Cashという仮想通貨サービスを制裁するという話もある。つまり、規制当局が個別のケースに対していちいち措置している状況だ。また、個別のケースについて訴訟が起きて、専門家が意見を述べ、判決が下るのを待っているというのが現状。そうではなく、法が定められて、消費者が損を被らず、損害があった場合にそれを規制する当局を定めるという作業が行われている。

こうした状況だけに、各種法案が上下院を通り成立するのが待たれている。問題は、これらの法案をいかに一本化するかだ。米上下院議員は、「立法者」としての能力が有権者に注目されているため、類似法案が乱立しやすい。規制当局の選定や罰則などについては、まだまだ議論があるだろう。

米連邦議会は、FacebookやTwitterなどWeb2の規制について、いまだに議論している。Twitterについては、情報保護が十分ではなかったと内部告発した元セキュリティー最高責任者、ピーター・ザトコ氏を議会がちかく召喚する見込みだ。

米連邦議会が、Web3についてどれほど納得できる法体系を構築できるのか、課題や山積みといえる。