【NFTトレンディ】2023年度税制改正で、法人の暗号資産課税ルール見直しへ

NFTトレンディでは、NFTやブロックチェーンに関連する注目トピックを取り上げて解説する。今週は2023年度の税制改正にあたって議論されている、日本の法人保有の暗号資産課税ルールの見直しについて紹介する。
【目次】
1.日本政府が法人の暗号資産課税ルールを見直す方針が明らかに
金融庁と経済産業省が、企業の暗号資産課税方法を見直す方針を固めたことが分かった。24日、読売新聞が報じた。スタートアップ企業の海外流出を防ぐ狙いで、2023年度の税制改正に向けて議論を行う。
自民党のデジタル社会推進本部「web3PT」座長の平将明衆議院議員もツイッターで本件に言及した。
暗号資産関連のスタートアップでは、「ガバナンストークン」と呼ばれる議決権付きの暗号資産を企業が発行し、投資家に売却することで資金を調達することが一般に行われている。
企業が暗号資産で資金調達を行う場合、日本では企業の売却益に課税されるだけでなく、保有資産についても期末の時価で評価を行い含み益があれば課税される。議決権を確保したり暗号資産価格への影響を抑える目的で、発行企業が暗号資産の一定割合を確保することが多く、そうしたスタートアップ企業にとって期末時価での課税はリスクや負担が大きい。
この課税方式が「Astar Network」などをはじめ日本の暗号資産スタートアップが海外に流出している要因となっているとして、近年問題視されていた。
今回新たな課税方式として、発行した企業が保有する暗号資産について自社保有分は課税対象外とし、売却益のみに課税する仕組みなどが検討される。
期末評価見直しの要望は、暗号資産の業界団体からも提出されている。一般社団法人 日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と一般社団法人 日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が2022年7月28日に公表した「2023年度税制改正に関する要望書」では、期末評価課税は短期売買目的で保有している市場暗号資産に限定し、それ以外のものを対象外とするべきだとしている。
2.法人の暗号資産税制に関する経緯と議論
企業の保有する暗号資産が期末時価評価の対象となったのは、2018年の税制改正だ。法人税法等の改正の概要には下記の記載がある。
内国法人が事業年度終了の時において有する市場仮想通貨の評価額は時価法により評価した金額とし、その評価益又は評価損は当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされました。
当時このような仕組みが採用された背景としては、「株券をはじめとする有価証券や金銀などと同様の扱いにした」というのが財務省の方針のようだ。
具体的には、2022年2月4日に行われた「第208回国会 内閣委員会 第2号」では、平将明議員がガバナンストークンについて期末評価を見直すべきではないかとの質問をした際に、藤原崇大臣政務官は下記のように答弁している。
ガバナンストークンについての課税についての財務省の考え方ということなんですが、一般論として申し上げれば、法人が年度末に保有し活発な市場が存在する暗号資産については、売買目的で保有する有価証券や金、銀などと同様に、おっしゃられたとおり、時価評価を行いまして、評価損益を計上することとなっております。
この取扱いの理由につきましては、企業会計上も時価評価することとされていること、あるいは、売却、換金が容易であること、仮に時価評価を行わなければ、所得の発生する事業年度に含み損のある暗号資産のみを売るといった租税回避行為が想定されることによるものであります。
こうしたことも踏まえ、ガバナンストークンについても、一般的には、事業年度末に時価評価を行い、評価損益を計上するという扱いをしているところであります。
一方で、「暗号資産・NFT専門の税理士事務所 カオーリア会計事務所」の泉絢也氏・藤本剛平氏による記事は、下記のように指摘している。
- 他の有価証券や短期売買商品では短期売買目的のもののみが期末時価評価課税対象となるのに対して、暗号資産では売買目的を問わず一律に期末時価評価課税の対象となっている
- これは、立案当時、暗号資産は投資対象又は支払手段として保有されるものと考えられていたことに起因しているのではないか
- 他国は暗号資産税制について法令ではなく行政のガイダンスで柔軟に対応している一方で、日本では法令で明確に定めてしまっており、期末評価課税を含めて日本の暗号資産税制はガラパゴス化している
株式では、子会社や関係会社の株式や満期目的の債券などは期末時価評価課税対象とならず、短期売買目的のもののみが期末時価評価課税対象となる。一方暗号資産はそうした保有目的を一切考慮せず、一律に期末時価評価課税の対象となってしまう。
またそもそも株式や融資での資金調達には法人税がかからないため、暗号資産での資金調達は他の資金調達方法と比較して負担の大きい税制となっている。
2018年の税制改正時点では企業が短期売買以外の目的で暗号資産を保有することは想定されていなかったが、現実にそぐわなくなってきていると言えそうだ。
一方、暗号資産での資金調達は株式と異なり、スタートアップであっても世界の個人投資家から資金を集めることが容易だ。そのため詐欺や資金持ち逃げの温床になっていることも事実である。むやみに暗号資産での資金調達を推進するのではなく、個人投資家保護の観点でも議論がなされるべきだろう。
自民党は、7月の参院選マニフェストで「ブロックチェーン・NFT(非代替性トークン)・メタバースなどの新技術を活用し、「Web3.0」に対応した新しいデジタル経済圏を確立」するための人材育成や環境整備を行っていくと述べていた。
参考:【NFTトレンディ】2022年参院選 各政党はWeb3をどう取り上げているのか?
2023年度の税制改正で法人税が見直されるのかどうか、引き続きウォッチしていきたい。
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