踊り場のMeta、景気減速でもメタバースへ総力戦

2022/08/22

Meta Platforms(旧Facebook)は、創業以来の「踊り場」に差し掛かっている。

同社は、社名をMetaに変えてまでメタバースへの進出をアピールした。しかし、同社のメタバースプラットフォーム「Horizon Worlds」がフランスとスペインに拡張されたという発表の画像が「ダサい」と批判を受けた。私はデザイナーではないが、これは私のような素人が作ったのではないかと思う画像だ。とはいえMetaは、時価総額4510億ドルの超優良企業だ。素人に仕事はさせないだろう。

また、直近の第2四半期決算では、同社初の減収でマーケットに衝撃を与えた。純利益も前年同期比で減益。世界的なリセッション(景気後退)のリスクと不安が高まる中、広告事業が打撃を受けたのが減収につながった。

ダサい自撮り画像となったマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)(38)は、断固として世界最大のメタバース企業になる舵をとるつもりでいる。それが明らかになったのは、米紙ニューヨーク・タイムズが掲載した「【異変】流出メモから見る、ザッカーバーグの本気度」からだ。

それによると、ザッカーバーグ氏は7月、世界中に散らばる側近をサンフランシスコのベイエリアにある本社に緊急招集した。幹部らを待ち受けていたのは、122ページものスライド資料。

世界的なリセッションとなれば、広告費が削られ、TikTok、YouTubeなどほかのソーシャルメディアと広告争奪合戦となる。Facebookが最大手とはいえ、その衝撃は大きい。実際、Apple、Google、Twitterなどは、景気減速に備え、すでに新規雇用にブレーキをかけ始めている。

ザッカーバーグ氏はこうした中、リストラもどきにも着手した。7月末の決算前の報道によると、「この会社にいるべきではない人間も多いだろう」と発言。幹部らを通じて生産性の低い社員に、退職することを勧めた。

しかし、大鉈を奮いながらもザッカーバーグ氏は、メタバースへの本格的な転換には、積極的に投資していく意向だ。

ニューヨーク・タイムズによると、メタバース関連の著書もあるマシュー・ポール氏はこうコメントしている。

「メタバースは次の10年間、人がどこでつながり合い、表現し合い、存在を認識するのかをめぐる実際の賭けなのです」

「メタバースに挑戦するための資金、技術、ユーザーたち、そして信念があるなら、やってみるべきです」

そして、まさにその体力があるのは、時価総額4500億ドル超(8月21日現在)で、月間アクティブ利用者36億5,000万人を抱えるMetaなのだろう。

Web2の巨人だったMetaは、Web3をも制覇するため、社内は総力戦モードになっている。それは、かつてのマイクロソフトを思い出させる。Windows95というOS発売によって「インターネット時代」への導火線に火をつけた(実は、かなり接続しにくかったが)。企業が生き残っていくためには、常に新たなマーケットを作り出していく必要がある。Metaはそのために、Web3のスペースをも凌駕しようという意気込みである。

Metaは、Web3のスペースをも制するのか。現在のところ、Web2の勝者としては試行錯誤が続き、何をしたいのかが見えてこない状況と言わざるを得ない。

津山 恵子(つやま・けいこ)プロフィール
ニューヨーク在住ジャーナリスト。
東京外国語大学卒、1988年共同通信社入社。福岡支社、長崎支局、東京経済部、ニューヨーク経済担当特派員を経て2007年に独立。Facebook(現Meta)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)、Instagram 創業者ケビン・シストロム氏、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏、YouTube共同創業者スティーブ・チェン氏、作曲家の坂本龍一氏、ジョン・ボルトン元米大統領補佐官、ジャシュ・ジェームズ米DOMO創業者などの著名経営者を単独インタビューしてきた。著書に「モバイルシフト」(アスキーメディアワークス)、「よくわかる通信業界」(日本実業出版社)など。日本外国人特派員協会(FCCJ)正会員。