暗号資産協会のJCBAとJVCEA、金融庁へ税制改正に関する要望書

2022/08/04
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一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は8月3日、一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と共同で、暗号資産に係る「2023年度税制改正要望書」を7月29日付で金融庁へ提出したと発表した。両協会の会員である暗号資産交換業者や、暗号資産やWeb3.0関連ビジネス事業者の意見を集約し、暗号資産取引にかかる利益への課税は20パーセントの申告分離課税とすることや、損失の所得金額から繰越控除などの要望を伝えた。

JCBAは毎年、政府の「予算・税制等に関する政策懇談会」に業界団体として唯一参加している。自民党デジタル社会推進本部 NFT政策検討プロジェクトチーム(PT)が2022年3月に公表した「NFTホワイトペーパー(案)」では、暗号資産やNFTに対する現行の規制や税制が足かせとなり、日本の Web3.0関連ビジネスが世界から取り残され始めていると指摘。社会基盤やルールを直ちに整備する必要があることを提言していた。

政府は6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」「骨太の方針2022」で、NFTや分散型自律組織(DAO)の利用などWeb3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める方針を明記している。しかし現状の所得税制では、暗号資産へのアクセスや決済利用をためらうものになっており、法人税制も、暗号資産の保有は他の資産と比較して不利な内容になっている。そのため、国内税制や規制の適用回避のため、企業や人材の海外流出が増加。諸外国と比べてブロックチェーン技術を活用した新たな事業を促進するための制度が整っていないという。

提言の内容は以下。

(1)分離課税
暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。暗号資産デリバティブ取引についても同様とする。
 
(2)法人税
期末時価評価課税の対象を市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(短期売買目的)で保有している市場暗号資産に限定し、それ以外のものを対象外とすることを要望する。少なくとも喫緊の課題への対応として、まず自社発行のトークンについて対象から除くことは必須である。
 
(3)資産税
相続により取得した暗号資産の譲渡時の譲渡原価の計算について、取得費加算の特例の対象とすることや、相続財産評価について、上場有価証券と同様、相続日の最終価格の他、相続日の属する月の過去3カ月の平均時価のうち、最も低い額を時価とすることを要望する。

例年の 20%申告分離課税の要望に加え、Web3.0 ビジネスの環境整備を目的とした法人税の要望と、相続時の資産税についても要望を追加したとのこと。両協会は「日本政府の目指すWeb3.0の推進のためには、ブロックチェーン技術を含めたデジタル技術を社会に普及させていくことが不可欠である」と述べている。