【NFTトレンディ】旅行×NFTの活用事例と旅行業界がNFTに取り組む背景
NFTやブロックチェーンに関連する注目トピックを取り上げて解説するMetaverse Styleの「NFTトレンディ」。今週は、NFTがホテルの宿泊券となるプロジェクト「NOT A HOTEL」など、旅行業界でのNFT活用を紹介する。
【目次】
1. 旅行業界でのNFT利用事例:「NOT A HOTEL」「Travala」「Dream Hollywood」など
このところ、旅行業界でNFTを活用するケースが増えてきている。スタートアップから大手旅行代理有名ホテルまで、プレイヤーは様々だ。NFTの活用方法も、ホテルを始めとする宿泊施設の会員権や航空券の販売、旅行口コミサイトでの活用など、多岐にわたる。
旅行はリアルでの移動が必要なため、一見するとデジタルのNFTとは関係がなさそうだが、なぜNFTへの参入が増えているのだろうか。まずはどのようにNFTが利用されているのか、事例を見ていく。
国内の取り組み事例
2022年8月より、国内の別荘に1日単位で宿泊できる権利をNFTとして販売する。「MEMBERSHIP」と呼ばれる会員権NFTを購入すると、「毎年旅をする日」がランダムに付与される仕組みだ。MEMBERSHIP保有者には毎年1回、宿泊日の3カ月前までに、宿泊用の鍵となる「THE KEY」NFTが付与され、宿泊日と利用できる別荘が決まる。NFTは1つ125万円から。
詳細:シェア別荘のNOT A HOTEL、「毎年旅をする日」付与のNFT販売
J&J事業創造(JTBとジェーシービーの合弁会社)
ピハナコンサルティングと協業し、2022年7月上旬に沖縄・那覇で開催されたスタートアップのカンファレンス「IVS」で、沖縄の伝統工芸品である「琉球びんがた」ラベルの泡盛購入と工房訪問の権利付NFTを販売した。
エイチ・アイ・エス
具体的な動きは不明だが、NFTやメタバースの活用を含むWeb3.0・バーチャルプロジェクトを始動すると、2022年7月に発表した。
海外の取り組み事例
2017年に設立された、仮想通貨(暗号資産)で決済ができる旅行予約サイト。コンシェルジュサービスや仮想通貨でのポイントバック等様々な恩恵を手に入れられる「Travel Tigers」NFTを販売する。
米ロサンゼルスにあるホテル。値引きや様々な利用特典付の会員権NFTを2022年6月に販売開始した。NFT保有者は、仮想通貨関連ギャラリーでのプライベートイベントへの参加、コワーキングスペースの利用、スイートルームへの1泊の宿泊、宿泊の10%割引といった恩恵を受けられる。NFTは、1つ3ETH(約70万円)。
タイの旅行代理店。2021年10月より、実際の航空券に交換可能なオーダーメイドNFT航空券を受注販売している。
詳細:NFT航空券発行のTavitt、オーダーメイド受注を開始 デザインと目的地をカスタマイズ
ユーザーが画像やおすすめ情報を投稿しNFTにもできる旅行口コミアプリ。パートナー企業と提携し、NFTを持っていることで様々な旅行関係のオファーを受けることもできる。
2.旅行業界がNFTに取り組む背景
なぜ、旅行業界でNFTの活用が進んでいるのか。一つには、コロナウイルス禍によって苦しい経営を強いられているため、新しい取り組みによって活路を見出そうという面があるのだろう。
一方で、NFTは旅行関連のビジネスモデルと相性が良いという側面もあるのではないか。具体的には、次の3つの要素が考えられる。
(1)会員権をNFTにすることで流動性を高めて資産価値を向上し、高価格でも販売しやすくなる
旅行以外でも言えることだが、会員権(メンバーシップ)をNFTにすることでユーザー間での取引が簡単になる。従来、ホテルなどの会員権は、費用を支払った本人や家族以外は利用が難しく、不要になっても誰かに売り渡すのは難しいことが多かった。
一方でNFTであれば、見ず知らずの相手であっても安全に取引することが可能なため、「不要になれば売れるので多少高くても購入しよう」というインセンティブを付与することができる。流動性が高まることによって、会員権に資産価値が生まれるのだ。
もちろん新規の会員権を販売すると会員権の総数が増えて価値が希薄化するため、資産価値を保つことが難しいというデメリットもある。しかし、NFTでは二次取引の際に発行元が手数料を得ることが可能であるため、新規発行をせずに継続的な手数料収入を得るといった選択肢もある。
(2)仮想通貨(暗号資産)に明るい人々にアピールするためのマーケティング手段となる
いわずもがなの点かもしれないが、NFTを利用すると、暗号資産やブロックチェーンに詳しい人々が注目してくれる可能性が高い。そのため新しい顧客層にリーチし、顧客基盤を拡大するマーケティング手段となりうる。また、暗号資産に詳しい人々は暗号資産の値上がりで利益を得ていることも多いため、価格が高くとも買ってもらえる優良顧客を獲得することも見込まれる。
(3)閑散期に対するリスクヘッジの手段となりうる
旅行業界は時期による需要の増減が激しい。そのためNOT A HOTELのような「泊まれる日がランダムに決まる」という手法は、閑散期に売り上げが大きく減ることに対するリスクヘッジとして有効だろう。閑散期に泊まれる権利はもちろん値下がりすることが考えられるが、先にNFTを売り切ることで旅行業者側は値下げや売れ残りのリスクを回避できる。
この点は、従来であれば旅行業者側が持つしかなかった閑散期の売上リスクをユーザーに転嫁しているだけと見ることもできる。しかしユーザーも「せっかく当選したのだからこの日は休みを取ろう」といった行動をする可能性があり、そうなると誰も損をせず繁忙期と閑散期のバランスが取れる。ユーザーが世間一般と休暇予定をずらすインセンティブが、価格以外の方法で付与される点は興味深い。
こうした「ランダム性」を持った旅行NFTはまだ多くないが、今後増えていくのではないだろうか。
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