メタバース事業に取り組む先端企業が出展「METAVERSE EXPO JAPAN」が開催

2022/07/28
METAVERSE EXPO JAPAN 2022のオープニングスピーチで挨拶するFacebook Japanの味澤将宏社長

メタバース関連事業を展開する企業や団体が集まって、メタバースの現在と未来について発信する「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」が7月27日と28日の両日、東京都内のホテルで開催された。Meta社(旧Facebook)を中心に組織されたメタバースエキスポジャパン実行委員会が主催し、約30の企業や団体、官公庁が参加した。

エキシビジョン会場には、VRや暗号資産の事業を手がけるIT企業のほか、通信キャリア、印刷会社、メディアなど多種多様な企業の「メタバース事業」のブースが並び、出展事業者と参加者が交流する熱気に包まれた。今回はメディアと一部関係者向けの「限定公開」だったが、同じ内容が、10月に幕張メッセで開催されるCEATEC 2022で披露されるという。

国際宇宙ステーションでの宇宙遊泳をVRで楽しめる「宇宙メタバース」のブース(バスキュール/JAXA)

■ バーチャルマーケットの世界をVRヘッドセットで体験

今回のMETAVERSE EXPOで注目したブースをいくつか紹介する。

まず、世界最大級のバーチャルイベント「バーチャルマーケット」を主催しているHIKKY。バーチャルマーケットとは、VR空間で実施されるマーケットフェスティバル。VR専門会社として2018年に設立された同社は、メタバースの一つである「VRChat」で、定期的にバーチャルマーケットを開催している。2021年の開催時は、約2週間で延べ100万ユーザーが来場した。

今回のEXPOでは、VRのヘッドセットを用意し、参加者が過去に開催したバーチャルマーケットを追体験できるようにした。バーチャルマーケットにはJR東日本やNTTドコモ、ヤマハ発動機などの大手企業やゴジラなどのIPを持つ企業が出展し、VR空間ならではの展示を楽しめるのが特徴だ。

VRヘッドセットを用意して「バーチャルマーケット」を体験できるようにしたHIKKYのブース

例えば、SMBC日興証券は2021年12月のバーチャルマーケットに、株価チャートに連動したVRジェットコースターを出展。リーマンショック時などのチャートの急降下をVRジェットコースターで疑似体験できるなど、単なる企業紹介のコンテンツではない点がミソだ。

また、海外発のブロックチェーンゲーム企業であるThe Sandboxもブースを設けて、来場者に「ゲーミングメタバースへ急ごう」とアピールした。Sandboxは、ブロックチェーン技術を基盤としたNFTゲームで、ユーザーがメタバース内の土地を自由に売買したり、ゲームやアートを制作して販売したりできる。

今回は、Sandboxのメタバース空間と同じようにレゴブロック調で再現した渋谷の109を展示。さまざまな企業やベタックマ(LINEスタンプの人気キャラクター)などのキャラクターとコラボレーションしている模様をデモンストレーションしていた。

The Sandboxのゲーム内の世界がリアルに再現されたブース

■ バーチャル店舗で実現する「未来のショッピング」

インターネット広告代理店大手のサイバーエージェントグループからは、今年2月に設立されたサイバーメタバースプロダクション(CyberMetaverse Productions)が出展し、「未来のショッピングの形をつくるバーチャル店舗」を案内した。

同社は今後、リアル調からアニメ調まで、さまざまなタイプのメタバース空間・店舗を構築できるサービスを通じて、VRやARでアバターを介した新しい購買体験を提供していく。NFTを活用したオリジナルアイテムの制作販売もできるようにするという。

サイバーエージェントと言えば、芸能人やSNSのインフルエンサーを活用したチャネル展開の上手さで知られる。その強みを生かし、芸能人のプライベートショップをメタバース空間で展開するなど、メタバースの新しい活用法を提案している。芸能人などのファンが好きな推しメンを応援する「推し活」と連動した展開も期待できそうだ。

サイバーメタバースプロダクションのブースでは、カメラで撮影した映像をメタバース上に表示するデモも行われていた

サイバーメタバースプロダクションのスタッフは「将来はアメーバブログやAbemaTVなど当社の強みと連携して、より多くのユーザーに楽しんでもらいたい」と話していた。

NTTドコモのブースでは、メタバース空間をアバターで楽しめる「XR World」や街遊びをAR体験でリッチにする「XR City」など4つの異なるサービスを紹介。大手通信キャリアとして、自社の通信インフラを活用すべく多角的に展開している様子をアピールしていた。

「最先端の技術や端末に接している方々だけでなく、ロースペックな端末を持っている方々もまだまだ多い。いかに通信で端末に負荷をかけないかを考えつつ、全ての人々に届くサービスを提供していきたい」(NTTドコモのスタッフ)

NTTドコモのブースで紹介されていた「XR Space App」

NTTドコモでは、MRやAR、VR、メタバースなどの新規事業を担う「XR推進室」が最近設置された。R&Dの部門などにバラバラに存在していたXR関連の組織を1つにまとめ、メタバースを含むXR空間に関わる新規事業の強化を図っていくという。

他のブースでも、VR上の国際宇宙ステーションで複数の人々が宇宙遊泳を楽しめる「宇宙メタバース」(バスキュール/JAXA)や、リアル世界の野球中継の画像と同期したVR空間でバッター視点などを楽しめるメタバースサービス「バーチャルPayPayドーム」(ソフトバンク)など、わくわくするアイデアとアプローチに溢れた展示がされていた。

■ 「メタバースは共創がテーマ。1社だけでは作れない」

これらのエキシビジョンと並行して、カンファレンスルームでは、メタバースの現状と未来に関する様々なトピックスについて、約30のセッションが披露された。

オープニングスピーチでは、Facebook Japan(Meta日本法人)の味澤将宏社長がメタバースの可能性やEXPO開催の狙いなどを語った。

「Metaのメタバースは共創がテーマで、1社だけでは作れない。今回のEXPOを日本から世界へ発信する場にし、メタバースを牽引する企業やクリエイターの集まる共創の場にしたい。共創には、官民連携でメタバースの発展に取り組むことが重要だと考えている。

ARやVRへの関心は高く、デジタルコンテンツを開発する企業は世界でも多い。中でも日本を最重要市場のひとつと私たちは捉えている。メタバースは、すでに活況を呈しているゲーム分野を皮切りに、働き方や教育、医療などさまざまな分野で活用されていく。今後ますますの発展が期待できる」

味澤社長はこのように語り、今後のメタバースの発展への期待を口にした。