「Web3はリアルなハリウッドの価値も高める」Meta Hollywood・Giovannni Yruela氏 【Web3の顔】

2022/07/21
メタ・ハリウッドのコアチーム代表、Giovannni Yruela氏

リアルの世界のあらゆるものがWeb3に向かう中、映画撮影の中心地ハリウッドもメタバースに進出しようとしている。Meta Hollywood(メタ・ハリウッド)は、映画をテーマにした米エンタテインメント大手プラネット・ハリウッドと、香港のブロックチェーン企業Animoca Brands(アニモカブランズ)が出資。7月6日には、アニモカブランズ傘下の人気NFTゲーム「The Sandbox」と提携し、メタバース上のハリウッドの野外撮影所で、イベントやWeb3体験を実現すると発表した。
「NFT.NYC2022」の会場では、メタ・ハリウッドのコアチームを代表するGiovannni Yruela氏に、裾野が広い映画ファンをどうメタバースに呼び込むのか戦略を聞いた。

■映画愛好者のためのエコシステムを

――メタ・ハリウッドとアニモカブランズは、どんなメタバースを目指しているのですか。

メタ・ハリウッドには、世界で最大規模の映画メモラビア(記念品)のコレクションがあります。私たちは、世界中の映画愛好者のためのWeb3エコシステム構築を目指しています。私は、プラネット・ハリウッド出身ですが、同社には6万点を超えるメモラビアの在庫があります。メモラビアだけでなく、異なるスタジオや映画・ドラマシリーズの知的財産(IP)を扱うマーケットプレイスも展開します。Web3で可能となる体験やユーティリティで、リアルのハリウッドの価値をも高めていけるのです。

――世界で最大のメモラビア在庫をどう利用するのですか。

ファンは、「ターミネーター」から「オズの魔法使い」まで、小道具や衣装を検索することができます。全てのメモラビアは、NFTとリンクしていて、メタ・ハリウッドでは、NFTドロップ(交換)イベントを提供していきます。例えば、あるセレブの誕生日に、最も有名な役や映画をテーマにしたNFTドロップを行なって、ファンは小道具やサイン入りポスターを収集することができます。イベントは、映画の何周年記念、ワールドプレミエの記念日、受賞記念日など一年中開催するきっかけがあります。

メタ・ハリウッドでは、早い者勝ちや競売方式ではなく、公平なくじ引き方式を採用します。コミュニティのメンバーが平等にチャンスを与えられ、トークンの$HWOODを使ってくじ引きのNFTドロップに参加できるようにします。

――The Sandboxとの提携を発表しています。

私たちは、The Sandboxの中にLANDを購入しました。そこでは野外撮影所(バックドロップ)の体験ができます。撮影所には、ホラーやトラベル映画のセット、あるいは特定の映画のセット、例えば「フェリスはある朝突然に」(1986年、高校生が学校をサボるドタバタコメディ)などのセットを作ります。ゲストは、自分達のアバターで撮影現場を体験できるのです。レッドカーペットのイベントやメモラビア博物館もあります。またメモラビアなどを所有することで、新たな特典を得られます。

私たちは、メタバース・プラットフォームのワイルダー・ワールドやディセントラランドとも手を組んでいて、提携関係には限りないチャンスがあります。

――ゲームとの親和性も高いですね。

実は、プラネット・ハリウッドの親会社は、バーチャル・ダイニング・コンセプツ(Virtual Dining Concepts)で、全米の中小のレストランや食品ブランドのオンライン宅配を支援する会社です。UberEATSなどの宅配アプリを使って、低コストで宅配ビジネスを始められるのです。メタ・ハリウッドは、この仕組みを使ったゲーミフィケーションを考えていて、「Play to Earn」ではなく「Eat to Earn」というサービスを導入したいと思っています。

もう一つは、メンバーがメモラビアや映画の資金を出したりできる仕組みを考えています。例えば、メモラビアを分析して、新しいメモラビアを購入するための資金を出したりします。また、インディ映画や、大きな映画プロジェクトの資金調達ができたらいいと思っています。コミュニティのメンバーが、プロジェクトの一部に融資することで、共同プロデューサーになったりできるわけです。

――メタバースに参加して、リアルな映画の制作にも関われるのですね。

コミュニティのメンバーは、すごくそういう面を楽しんでいますよ。ファンは、過去の映画に対するノスタルジーを抱いています。特に、1980、90年代のアクションとホラー映画の人気は根強いです。私たちはこれまでに、コミュニティに対してメモラビアの景品を出しています。一番最近のものは、「ダイ・ハード3」からで、ニューヨーク連邦準備銀行の地下から盗まれる小道具の金塊です。小道具ですが、欲しい人のために素敵な額と盾も付けました。

その前には、スター・ウォーズ3部作のロビー・カード(映画館で映画宣伝に使われる小型のポスターやカード)や絵コンテも景品にしました。コミュニティは大歓迎しています。今後もどんどん景品を出します。

――現在のコミュニティの規模を教えてください。

現在Discordで15,000人、Twitterで10,000人ちかくです。彼らは明らかに、コアの映画ファンですね。しかし、これからどんどん増えていきます。映画やメモラビア、NFTの価値は、彼らなしには成立しません。ですから、フォーラムなども大切です。

私たちは6月9日、俳優トム・スケリットと初めてのAMAをDiscordで開きました。彼は「トップ・ガン」のバイパー役です。コミュニティは大歓迎で、素晴らしい、あるいは非常に思慮ある質問が彼に寄せられました。こうした俳優やクリエーターたちとファンの交わりが、メタ・ハリウッドにとってとても大切です。

津山 恵子(つやま・けいこ) プロフィール
ニューヨーク在住ジャーナリスト。
東京外国語大学卒、1988年共同通信社入社。福岡支社、長崎支局、東京経済部、ニューヨーク経済担当特派員を経て2007年に独立。Facebook(現Meta)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)、Instagram 創業者ケビン・シストロム氏、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏、YouTube共同創業者スティーブ・チェン氏、作曲家の坂本龍一氏、ジョン・ボルトン元米大統領補佐官、ジャシュ・ジェームズ米DOMO創業者などの著名経営者を単独インタビューしてきた。著書に「モバイルシフト」(アスキーメディアワークス)、「よくわかる通信業界」(日本実業出版社)など。日本外国人特派員協会(FCCJ)正会員。