日本はメタバースに「参入せざるを得ない」Yat Siu・Animoca Brands共同創業者【Metaverse Japan Summit2022】

2022/07/19
事前収録で参加したAnimoca Brands共同創業者のYat Siu氏

一般社団法人 Metaverse Japanが7月14日、メタバースの社会実装に向けた課題や未来を議論するカンファレンス「Metaverse Japan Summit2022(MVJサミット)」を開催した。香港のブロックチェーン企業Animoca Brands(アニモカブランズ)共同創業者のYat Siu氏が参加し、メタバースは「本質的に世界で最も価値のある資源へのアクセスに関係している」と述べた。

MVJサミットでは、MVJの理事やアドバイザーを中心に、今後のデジタル経済圏のフロンティアであるメタバースの社会実装に向け、日本の成長戦略や課題、ビジネスや社会にどう取り入れるべきかを議論。「日本経済」「アーティストエンパワーメント」「ルールメイク」「ビジネス」「地方自治体」「テクノロジー革命」など、メタバースと関わる多岐にわたる領域でセッションを行った。

Siu氏は「Web3メタバースのグローバルアップデート」と題したセッションに登壇した。エンジニア畑の起業家で投資家の Siu氏は、1990年にドイツのAtariでキャリアをスタートし、95年に香港でアジア初の無料ウェブページ・プロバイダー香港Cybercity/Freenationを設立。98年にOutblazeを設立し、多言語ホワイトラベルWebサービスのパイオニアとして数々の賞を受賞している。Animoca Brandsは340以上のWeb3企業に投資先し、参加に人気NFTゲーム「The Sandbox」「GAMEE」などがある。

■真のメタバースは「(旧)Facebookのビジョンと異なる」

Siu氏は、メタバースの定義について「真のメタバースとは、Meta(に改名する)以前のFacebookのビジョンのような、基本的にARとVRで人々を構成するものではないと考えている」と言及。

「今日、世界で最も価値のある資源は、石油や天然資源などではなく『データ』である。その強みの一つは、本質的なネットワークの構成において無限の効果を生み出す能力があること。もう一つは、データ自体が基本的に私たち個人によって生み出されるものであること。言い換えれば、私たちはこの地球上では限られた期間しか生きられないので、私たちの時間より価値があるものは存在しない」と説明した。

一方で「大事なのはデータそのものではない」とも指摘。データは個人がダウンロードしても意味はなく、Facebookのようなプラットフォーム上で生み出されるネットワーク効果を用いてデータを共有する必要がある。それらは、Googleや中国IT大手の騰訊控股(テンセント)などの大企業が所有しており、ユーザーは、そうしたサービスを使うことで「彼らのために無償で働いているのと同じ。私たちはデジタルに植民地化され、一種のデータ封建主義の中に存在している世代であると考えることができる」と述べた。

しかしメタバース上では、データは公共のネットワークを介在する公共財であり、資産になる、と同氏はいう。

「現実の世界で、車を所有していればUberやGrab、Lyftなどの配車サービスやオーディオ機器の製造、自動車関係のサービスがメーカーの許可など必要なく展開できるように、ブロックチェーンは誰かの許可のいらない自由参加型のデータ構造で、その上でNFTや暗号資産などの構築が可能な造りになっている」とSiu氏は解説した。

■ブロックチェーン技術は 「社会的識別子」を本質的に実現

ブロックチェーンとNFTの世界のメカニズムは、現実の世界で自分が何者であるか、他の人々にどのように見てもらいたいかという「社会的識別子」の本質的な実現ができるという見解を明かした。NFTは、実際に所有する方法はなくても、個人の歴史やアイデンティティー、文化の一部を保存できる方法であると解説。ブランド品を購入する際に、その物のもつデザイン性やストーリーに価値を置いて購入することと、人気NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」を持つことは社会的識別子としての同義であると述べた。

SANDBOXとコラボレーションした渋谷109プロジェクトの様子

また、Animoca Brandsは2022年2月、日本に戦略的子会社Animoca Brands株式会社を設立している。設立の理由を氏は「日本は文化の発信地であり強力なスポット。文化が深い場所はこのテクノロジーから恩恵を受けることができる傾向があると思っている」と説明。アニメや漫画、食べ物など日本のカルチャーはすでに世界に浸透しており、文化的なインパクトを生み出すためのさまざまな方法をリードしてきた点も挙げた。

ブロックチェーンの中にあるものはコンテンツの一部であり、従来のコンテンツは資産となって現在よりも価値のあるものになる可能性があると指摘。「日本は世界でも有数のコンテンツプロデューサーの一つ。日本にとってメタバース参入は選択肢ではなく、参入せざるを得ない」と断言した。