【NFTトレンディ】暗号資産が下落する中、NFT市場はどう変化しているか?

2022/06/20

今週のNFTトピックでは、NFTやブロックチェーンに関連する注目トピックを取り上げて解説する。今週は暗号資産価格が暴落する中、著名NFTはどのような影響を受けているのか見ていく。

【目次】

  1. 海外・国内とも人気NFTの価格は1/4~1/5に
  2. 企業のNFTへの参入は衰えず
  3. 海外NFTインフルエンサーの声:バランスを取ることが大事

2022年5月以降、暗号資産の価格が暴落している。ビットコイン(BTC)は6月18日現在約1BTC=216万円と、2021年11月8日の過去最高値766万円より66%下落し、イーサリアム(ETH)は現在1ETH=14.3万円と同日の過去最高値54.6万円より74%下落している(CoinMarketCap調べ)

1年間のETH価格推移(出典:CoinMarketCap)

 

NFT市場はどのように暗号資産の下落の影響を受けているのだろうか?

1.海外・国内とも人気NFTの価格は1/4~1/5に

海外の人気NFTコレクションは、最も高価だったときからドル建で70%~80%程度安くなっている。OpenSeaの取引高が多い人気NFTコレクションについて、フロア価格(1つのコレクションのうち、市場で最も安く売られているNFTの価格)の最高値と現在価格を比較した。

NFT名称 最高フロア価格 最高フロア価格タイミング 現在のフロア価格 最高価格からの変化
CryptoPunks 3,227万円 2022/04/05 720万円 -77.7%
Bored Ape Yacht Club 5,633万円 2022/05/01 1,265万円 -77.6%
Mutant Ape Yacht Club 1,543万円 2022/04/25 238万円 -84.6%
Azuki 1,466万円 2022/04/03 144万円 -90.2%
Decentraland 2,14万円 2021/11/29 25万円 -88.4%
Clone X 919万円 2022/04/05 133万円 -85.6%
Moonbirds 1,539万円 2022/04/22 275万円 -82.2%
Doodles 917万円 2022/05/03 150万円 -83.7%
Meebits 268万円 2022/05/04 50万円 -81.4%
Cool Cats 660万円 2021/10/06 51万円 -82.3%
CoinGecko調べ)

 

取引高トップ1位と2位のCryptoPunksとBored Ape Yacht Club(BAYC)は、70%台の下落率となっており、人気NFTの中では比較的下落度合いが小さい。

一方でたとえばメタバースプラットフォーム「Decentraland」の土地NFT「LAND」や、NIKE傘下の企業RTFKTがアーティスト村上隆氏とコラボした「Clone X」など、人気のあったNFTでもフロア価格は1/5以下になっている。

日本発のNFTコレクションの価格も海外コレクション同様に落ちている。CoinGeckoにデータがあるもののみまとめた。

NFT名称 最高フロア価格 最高フロア価格タイミング 現在のフロア価格 最高価格からの変化
Murakami Flowers 428万円 2022/04/10 53万円 -87.7%
Neo Tokyo Punks 43万円 2022/04/10 8.6万円 -80.0%
CoinGecko調べ)

 

こうした価格推移からは、NFTの価値は暗号資産の価値から独立したものではなく、暗号資産の値動きに大きく左右されていると言えそうだ。

2.企業のNFTへの参入は衰えず

暗号資産市場の暴落に伴ってNFT市場も冷え込んでいるが、企業やアーティストの参入に大きな衰えは今のところ見られない。

たとえば、フランスのファッションブランドLACOSTE(ラコステ)は6月14日、Web3.0エクスペリエンス「UNDW3(アンダーウォーター)」の立ち上げを発表した。第1弾として同日から、ブランドを象徴するワニが水面に顔を出しているNFT画像を販売した。販売価格は1つ0.08ETHだったが、6月18日現在は0.244ETH(約3.1万円)と3倍以上の値段が付いている。

日本でも、6月18日、男女4人組の人気バンド「ゲスの極み乙女。」が結成10周年を記念してNFTアートプロジェクト「Maru(丸)」を立ち上げた。プロジェクトのために書き下ろした新しい楽曲の音楽データを含む、1203点のアート作品を提供するとのことだ。

ETH価格が安くなったことにより、ガス代(イーサリアムネットワークに支払う手数料)も安くなっている。企業にとってはNFTに参入しやすいタイミングかもしれない。

3.海外NFTインフルエンサーの声:バランスを取ることが大事

一方で、個人のNFT投資家の中に は、大きな打撃を受けている人も多いだろう。Twitterのフォロワー数が29万人いるNFTインフルエンサーZeneca_33氏は、6月13日に公開した自身のニュースレターでこの下落相場に関する考えを語っている。

「もう数字が上がっていかないし、去年のように楽しくないので暗号資産から興味を失っていく人たちも多いだろう。それは普通のことだ」

「一方で自分は、暗号資産とNFTに深い確信を抱いている。今後様々な可能性のあるユースケースが出て来たり、グローバル企業が参加してブロックチェーン技術の価値を理解するだろう。富裕層がNFTアートを収集したり、ETHやNFT領域で開発するために多額の資金調達を行うだろう」

「でもやはり、ほとんどのNFTプロジェクトの価値はゼロになると思う。これからも新しいNFTプロジェクトがたくさん出てきて、その多くもゼロになるが、中には生き残って成長するプロジェクトもあるはずだ。裕福になれる大きなチャンスもあるが、同時に大きなリスクも存在する。私が思う最善の方法は、「バランスをとること」だ」

Zeneca_33氏は上記のように述べた後、「現金やステーブルコインの貯えを作ること」「暗号資産に人生をすべて賭けないこと」などを推奨している。バランスを取り、生き残りさえすれば次のチャンスがめぐってくるからだ。

NFTが注目を集め始めた2021年3月以降、初めての本格的な冬の時代が到来している。どのように対処し自分の資産を守るのか、あるいはチャンスを見出すのか考えておく必要がありそうだ。