NHK放送技研、人間の眼と同じ見え方のHMD開発

2022/05/27

放送技術分野を専門とするNHKの研究機関、NHK放送技術研究所は、物体からの反射光などを実世界と同じように再現する「ライトフィールドヘッドマウントディスプレー(HMD)」を開発した。5月26~29日に開催している研究成果を一般に公開する「技研公開2022」で紹介した。

ライトフィールドHMDは、物体の表面から出て眼に届く光を再現することで、3次元映像を表示する。光線を再現するために、ディスプレーと2種類のレンズを使用。レンズに対応する小さな被写体の特殊な映像が表示されたディスプレーをレンズ越しにのぞくと、人間の眼と同じように奥行き位置と輻輳運動で知覚する奥行き位置が等しくなって焦点を合わせるため、3次元映像が自然に再現されるという。

既存のHMDは主にディスプレーと接眼レンズで構成される。接眼レンズをのぞき、左眼と右眼に視差のある映像が提示されると輻輳運動が生じ、ユーザーは奥行きを知覚することができるが、ディスプレーの拡大像から3次元映像までの奥行きの差が大きい場合は、眼の焦点を合わせているディスプレーの拡大像の奥行き位置と輻輳運動で知覚する3次元映像の奥行き位置が異なってしまうとのこと。そのため、見ている箇所にピントがあわず、眼精疲労が起こると考えられるという。

また従来のライトフィールドHMDは、3次元映像を接眼レンズで拡大して視聴するための光学系のサイズが一般的なものより大きくなっていた。表示に用いる画像の生成に時間がかかり、視線方向の動きに応じたリアルタイムのVR視聴も難しかったという。

映像をディスプレーの外側に虚像として形成させることでHMDを小型化し、画像生成もリアルタイム化した。NHK放送技術研究所は今後も、自然な3次元映像表示と視覚疲労の抑制による快適なVR視聴ができるHMDの研究を進めるという。