病気療養の子どもがメタバースで学校参加 実証プロジェクト実施

公益財団法人ベネッセこども基金と一般財団法人ニューメディア開発協会は5月24日、共同プロジェクト「病気療養の子どもがアバターロボットで学校生活に参加し『笑顔』になる。学び、体験のモデル拠点校支援事業」を実施すると発表した。メタバースでの「子どもたちの新しいコミュニケーション」についても試行、実証を行う。

ベネッセこども基金は、経済的困難を抱える子どもや、病気や障がいを抱える子どもの学び支援などを手がける。16年からは病室や病院内に用意されている院内学級と前籍校をICTでつなぎ、リモート技術などのベンチャー企業iPresenceが手掛ける分身ロボット「OriHime」を経由して授業参加する院内学級プロジェクトなどを行っている。ニューメディア開発協会は、未成年の入院患者の学校教育や生活参加支援と、復学不安の軽減や病院内学校と前籍校教師の連携を目的にしたアバターロボットを活用した調査や開発、研究を実施している。

プロジェクトのテーマは、病気療養などによって登校が難しく、授業や日常的な学校生活に参加することができない子どもたちの支援。そうした子どもたちは学校や友だちに対して「疎外感」や「周りから取り残されている」という気持ちを抱いているほか、国立がん研究センターの調査によると、院内学級へ転校しても休学や退学を余儀なくされることが増え、特に高校生は6割が休学しているという。

療養中の子どもたちが院内学級や病室、自宅から学校生活に参加するための手段として、アバターロボットを活用。OriHimeなどを使い、遠隔地からでも自分の意思で視点を変え、教室内の見たい方向を自由に見ることができるため、授業に参加している実感が得られるという。

コミュニケーション促進へ、メタバースも活用する。メタバース空間にはクラスメイトと同じ条件で参加できるため、授業に主体的に参加する意欲を推進することも可能。また子どもたちが切望する、休み時間の友だちとの会話なども楽しむことができるようになるという。

27日にはモデル拠点校を選出やメタバースの活用効果の検証、継続的な成功利用事例の創出やその情報発信などを行うプロジェクトの共同発表会をオンラインで開催。11月と23年3月には進捗報告会の開催を予定している。