【NFT Weekly】Murakami.Flowersインサイダー騒動とは?/「Coinbase NFT」公開/ニコニコ超会議でNFT配布/BAYCのメタバース土地「Otherdeed」

2022/05/09

NFT Weeklyでは、過去1週間のNFTに関するニュースの紹介と、注目トピックの解説を行う。

まず注目トピックでは、村上隆氏による世界的な人気NFTプロジェクト「Murakami.Flowers」に関して、インターネット上で巻き起こっているインサイダー騒動について解説する。

今週は、「CoinbaseNFT」β版が公開、「LINE NFT」がニコニコ超会議で限定NFT配布、BAYCのメタバース土地NFT「Otherdeed」が完売といったニュースがあった。

【目次】

  1. 今週の注目トピック:Murakami.Flowersインサイダー騒動とは?
    どのようにしてインサイダー疑惑が浮上したのか?
    SNSでは「倫理的に間違っているのでは」と炎上
    CloneXや Murakami.Flowers のホルダーはどのように考えているか?
  2. 今週のNFTニュース
    Coinbase、NFTプラットフォーム「CoinbaseNFT」β版を全ユーザー公開
    NFTマーケットプレイス「LINE NFT」がニコニコ超会議で限定NFT配布
    BAYCのメタバース土地NFT「Otherdeed」が完売、200億円以上のガス代が消費される

1.今週の注目トピック:Murakami.Flowersインサイダー騒動とは? 

「スーパーフラット」と呼ばれる芸術様式などで世界的人気を誇る現代アーティストの村上隆氏のNFTプロジェクト「Murakami.Flowers」のリビール(NFTを開封し、特徴やレア度を明らかにするイベント)が5月4日始まった。

OpenSeaで販売されているMurakami.Flowersの一部

リビールに際して、同プロジェクトの関係者が「大量のインサイダー取引を行っているのではないか」との推測がインターネット上を騒がせている。

注目されたのは、「nftMATATABI」というアカウントだ。同アカウントは、一般にはどのNFTがレアか明らかになっていない段階で、Murakami.FlowersのNFTを高額で大量に購入していた。その中には、レア度の高いNFTが複数含まれていたという。Etherscanのデータによれば、「nftMATATABI」のMurakami.Flowers購入総数は25個、合計購入金額は832.76ETH(約3.3億円)にものぼる。

Murakami.Flowersの一般販売は抽選で行われ、6751個のNFT販売に対して490万件の応募が寄せられるなど、非常に人気の高いNFTプロジェクトだ。リビール前には約7ETH(280万円)と高額で取引されているため、大きな注目が集まっている。

どのようにしてインサイダー疑惑が浮上したのか?

「nftMATATABI」アカウントは、5月4日のMurakami.Flowersリビール開始直後、平均で1つあたり約33ETH(1,320万円)といった大金を支払ってNFTを購入した。リビール前価格の約7ETH(280万円)と比較すると非常に高値で購入したことになる。一連の行為が「対象のNFTがレアだと分かっている人物が、高値で購入したのではないか」とインターネットユーザーの疑いを招いた。確かに、この時点ではまだリビールは全1万個のNFTのうち20%程度しか進んでおらず、NFTのレア度を見極めることは普通のユーザーには難しかったと見られている。

さらに、「nftMATATABI」のイーサリアムアドレスには、「Takashipomkaikaikiki」から、34個のMurakami.Flowersと約7,000万円相当のETHが送られていることが分かった。「Takashipomkaikaikiki」のアカウントは、村上氏がTwitterのアイコンにしている「Clone X #1」を保有しており、「村上氏本人のものではないか」と見られている。これにより、7000万円相当のETHの送り先「nftMATATABI」についても、関係者のアカウントではないかという憶測を呼ぶことになった。

今回とは異なる人気NFTプロジェクト「Clone X」についても、物議を醸したことがある。「Takashipomkaikaikiki」のアカウントは2021年12月からClone Xを大量に購入し、5月7日現在、148個のClone Xを所有している。 22年2月5日には、Clone Xの保有者にNIKEのスニーカーNFTが無料配布されるとのアナウンスもあり、これを狙って利益を得ようとしたのではないかと指摘されているのだ。

しかし、もし一連の行為が一般的な「インサイダー取引」に類似していた場合でも、現時点では違法性を問えない可能性が高い。

日本法においては、インサイダー取引は金融商品取引法で規制されている。その内容について、日本取引所グループのHPでは以下のように解説されている。

  • インサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするもの。
  • そうした情報を知らされていない一般の投資者は、不利な立場で取引を行うこととなり、証券市場の信頼性が損なわれかねないため、金融商品取引法で禁止されている。
  • 違反者には証券取引等監視委員会による刑事告発や課徴金納付命令の勧告が行われる。

NFTの取引にこの「金融商品取引法」が適用されるのか、明確な基準がないのが現状だ。

NFTのレア度とは?】
プログラムによってNFTを大量に生成できる「ジェネラティブNFT」においては、NFTの制作者は、メタデータを利用してNFTの「性質(Properties)」と各性質の出現率を設定するのが一般的だ。珍しい性質を持ったNFTは「レア度が高い」と認識され、市場で高値で取引されている。

たとえば、Murakami.Flowersであれば、「Accessory(アクセサリー)」「Background(背景)」といった、各NFTが持ちうる性質が全部で10個定義されている。「Accessory」の性質には「Bow Tie(蝶ネクタイ)」や「Earrings(イヤリング)」「Sake(酒)」など75種類が存在し、最も出現率が高い性質は「None(なし)」(3646個)、最も出現率が低く珍しい性質は「Sake」(1個)等といったように、各性質のレア度も決まっている。

SNSでは「倫理的に間違っているのでは」と炎上

Twitterでは、一連のNFT取引について疑問を呈する意見が多く見られた。

「これは間違っているのではないか」との問題提起に、41.2万人のフォロワーを持つNFTインフルエンサーPranksy氏も「Yes, it is(そう、間違っている)」「At least until 100% revealed(少なくとも、100%がリビールされるまでは)」と返信している。

また、インサイダー取引の動機として「レアなNFTの二次流通価格を上げて、手数料収入で利益を得るためではないか」といった推測も見られる。

一方で、こうしたインサイダー取引について、「NFT界隈においてはどのプロジェクトでも行われている、いつものことだ」といった諦めの声や、「村上氏のプロジェクトは大成功で大きな利益が出ているはずなのに、疑惑を持たれるような行動をするのはなぜか?」といった困惑の声もある。

また、騒動は他のNFTプロジェクトにも影響を与えている。人気NFTプロジェクト「Azuki」の共同創業者であるlocation tba氏は、NFTコレクション「BEANS」に際して自分たちがインサイダー行為をしていないことを詳細に説明した。

CloneXや Murakami.Flowers のホルダーはどのように考えているのか?

一方で、実際にCloneXや Murakami.Flowers のNFTを持っている人はどのように考えているのだろうか。

両方のNFTを持っているAさん(40代男性)は「わざわざインサイダー取引をする理由があるだろうか」と首をかしげる。「レアなNFTを買い占めるくらいなら、始めから市場に出さずに保有しておけばよいこと。いったん市場で発売されたことは公平なmintをしている証拠」だというのだ。

また、価格についても、購入時より高く転売して利益を得られなければ意味がないが、NFTにはその確証がない。

5月11日からは、ニューヨークのガゴシアンギャラリーで村上氏の個展「An Arrow through History」が開催される。A氏は、権利関係や保有者の感情などを踏まえ「こうした個展などに出展したい作品を、高額で買い戻している可能性もあるのではないか」と見ている。

また、A氏自身を含め、実際のCloneXや Murakami.Flowersホルダーから不満の声を聞いたことはないそうだ。

村上氏サイドは、5月8日時点で本件について言及していない。公式見解の発表が待たれる。

2.今週のNFTニュース

Coinbase、NFTプラットフォーム「CoinbaseNFT」β版を全ユーザー公開

大手暗号資産交換所の米取引所Coinbase(コインベース)は5月4日、NFTマーケットプレイス「CoinbaseNFT」のβ版を全ユーザーに公開した。これまでは閲覧しかできなかったユーザーも、今後は自由に取引が可能となる。

CoinbaseNFTは、Coinbaseが提供するNFTマーケットプレイス。4月20日に公開された段階では、ウェイティングリストに登録したユーザーを順に招待する仕組みだった。コメントや作品の評価機能、他ユーザーのフォローや関連するNFTのリコメンド機能などを備え、ユーザーによるコミュニティの創造をめざすという。

詳細:https://www.metaverse-style.com/trend/6160

NFTマーケットプレイス「LINE NFT」がニコニコ超会議で限定NFT配布

LINEの暗号資産事業やブロックチェーン関連事業を展開し、NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」を提供しているLVCは、4月29~30日に千葉市の幕張メッセで行われる「ニコニコ超会議2022」で、「超NFT」ブースへ初協賛し、会期中の来場やオンライン視聴企画で10種類の超会議特別仕様NFTを配布した。

詳細:https://www.metaverse-style.com/trend/6118

BAYCのメタバース土地NFT「Otherdeed」が完売、200億円以上のガス代が消費される

人気NFTシリーズ「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」の運営「Yuga Labs」によるメタバースプロジェクト「Otheside」の土地NFT「Otherdeed」の第一弾セールが、日本時間5月1日に開催された。

Otherdeedの人気により、セール時にはイーサリアムネットワークが混雑。ガス代が高騰し、2ETH(約80万円)程度のガス代を払わなければ購入できないという事態が発生していた。Otherdeedのセールでバーン(燃焼)されたETHは55,843、日本円にして約200億円にものぼった。1つのプロジェクトが起こしたガス燃焼としては史上6番目となる。

Yuga Labsは、イーサリアムネットワークを混雑させたことについてTwitterで謝罪を行い、またガス代を支払ってもOtherdeedを購入できなかった人には、ガス代分のETHを補填した。