【NFT Weekly】NFTは環境に悪いのか?/Rakuten NFTとテレ朝が提携・WWFがNFT販売中止

2022/02/13
画像:Shutter Stock

NFT Weeklyでは、いま注目のトピックに関する解説と、過去1週間のNFTに関するニュースを紹介する。

今週はRakuten NFTとテレビ朝日が提携、ゲーム特化ブロックチェーン「Oasys」発表、世界自然保護基金(WWF)が環境懸念をうけNFT販売を停止といったニュースがあった。

注目トピックでは、「NFTは環境に悪いのか」という論点について解説する。 世界各地で、実は大量の電力を消費しているブロックチェーンネットワーク。ブロックチェーン上で発行されるNFTもその例外ではないが、果たして――。

【目次】

  1. 今週の注目トピック:NFTは環境に悪いのか?ブロックチェーンの電力消費問題とは
    「NFTは環境に悪い」論:1回の取引で排出されるCO2は、日本人1人が6日間に排出する量と同等
    「NFTは環境に悪くない」論:CO2排出量は、NFT発行や取引量の増減と無関係
    「環境に優しい」をうたうブロックチェーンも
    最後に
  2. 今週のNFTニュース
    楽天開設のNFTマーケットプレイス、テレビ朝日の映像NFT化し販売
    ゲーム特化ブロックチェーン「Oasys」発表、バンダイナムコやセガも参画
    世界自然保護基金(WWF)がNFT販売を停止 環境保護観点の反発が理由か
    米映画館「ザ・バットマン」前売券購入者に限定NFTを配布
    Gucciがメタバース上の土地「LAND」を購入、ファッション特化空間を構築

 

1.今週の注目トピック:NFTは環境に悪いのか?ブロックチェーンの電力消費問題とは

今週は、世界自然保護基金(WWF)が環境問題についての反発をうけNFT販売を停止したというニュースがあった。

ビットコインやイーサリアムといったブロックチェーンネットワークは、計算力によるマイニング競争によって成立しているため、世界で膨大な数の計算用マシンが投入され電力を大量消費している。

NFTに異を唱えるアーティストや識者の中には、こうした膨大な消費電力や、それに伴う二酸化炭素の排出量という点に懸念を持つ人もいる。一方で、そのような見方は誤りだとする考え方もある。

この記事では、NFTと環境問題についてどのような議論があるのかについて見ていく。

「NFTは環境に悪い」論:1回の取引で排出されるCO2は、日本人1人が6日間に排出する量と同等

ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産が環境に与える問題については、電気自動車のTESLA創設者であるイーロン・マスク氏といった著名人も懸念を示している

Digiconomistの計算によると、イーサリアムが1年に消費する電力は2022年2月現在、約113Twh(テラワット時)で、オランダ一国で消費される電力量とほぼ同程度だ。イーサリアム上の取引で発生するカーボンフットプリントは1回あたり平均125.84kgで、日本人1人の6日間の生活で排出される量に相当する。

こうした点を問題視するアーティストも存在する。

光の彫刻で知られるフランスの現代アーティストのJoanie Lemercier(ジョアニー・レメルシェ)氏は、2021年2月、環境への影響を考慮してNFTの第2弾リリースを取りやめた。

同氏は、第1弾として合計53個のイーサリアムブロックチェーン上のNFTを発行した後、自身の販売した53個のNFTが約80kgのCO2を排出し、さらにコレクターによる再版がその影響を増大させていると知り衝撃を受けたと述べている

また、ゲーム大手のセガが2021年4月にNFTコンテンツのリリースを発表した際には、Twitterで環境問題についての懸念が英語でいくつも寄せられた。たとえば、1人は「子どもの時、セガのキャラクターは環境について考えることを教えてくれました。このような地球環境の破壊につながる一面を見て、矛盾に不快感を覚えます」と書いている

「NFTは環境に悪くない」論:CO2排出量は、NFT発行や取引量の増減と無関係

一方で、こうした環境問題への見方については異議が唱えられている。アート特化NFTマーケットプレイスの「SuperRare(スーパーレア)」は、「いいえ、クリプトアーティストは地球を傷つけていません」と題する公式ブログ記事で「NFTは環境に悪い」とする考え方に反論している。

論点としては、主に下記2つが挙げられている。

  1. ブロックチェーンの性質上、ある時点でのイーサリアムの電力消費量は決まっており、NFTの発行や取引の増減、ネットワークの混雑度合いなどによって電力消費量は変化しない
  2. イーサリアムは2022年のETH2.0へのアップデートによって、電力を大量消費するプルーフ・オブ・ワーク(PoW)方式から、電力をほとんど消費しないプルーフ・オブ・ステイク(PoW)方式へと移行予定

1は、平たく言えば「イーサリアムブロックチェーンは、NFTを発行・取引しようがしまいが構造上一定の電力を消費する」という主張だ。これに対しては、NFTの発行や取引がイーサリアムネットワーク自体の価値の維持・向上に寄与するのであれば、結局は電力消費を支持するのと変わらないという反論もある。

2のプルーフ・オブ・ステイク(PoS)方式への移行は、イーサリアム創設の当初から、Vitalik Buterin氏によって考案されていた。PoSは、保有するトークンの量によって取引承認の成功率を決める仕組みである。PoSでは、PoWと違い膨大な電力を消費して計算マシンを動かす必要がなくなる。

また、上記の観点以外にも、「イーサリアムの消費電力は世界全体の消費電力のわずか0.5%であり取るに足らない量である」という主張や、「暗号資産のマイニングには環境に優しい再生可能エネルギーが多く用いられている」との見方もある。

「環境に優しい」をうたうブロックチェーンも

また、ブロックチェーンネットワークの中には、環境に優しい方式を採用していると主張するものもある。

たとえば、暗号資産の時価総額ランキング8位のSolana(ソラナ)や41位のTezos(テゾス)、49位のFlow(フロー)は、電力を消費して計算マシンを動かす必要がないPoS方式を利用しており、「グリーンなブロックチェーン」を自称している。

先に見たように、イーサリアムも、22年6月ごろに行われる予定のETH2.0へのアップデートで、PoSへの移行が計画されている。

最後に

WWFのNFT販売中止の一件のように、NFTやブロックチェーンの環境負荷に関する論争は、NFTプロジェクトの決断にも関わるようになっている。現在、NFTの環境負荷についての議論は平行線を辿り、終止符が打たれることなく続いているように見えるが、2022年6月にイーサリアムがPoSに移行すれば、NFTの環境負荷への非難の声は少なくなるだろう。アーティストやプロジェクト、ファンがNFTに対してどのような姿勢を取るのか、今後も注目したい。

2.今週のNFTニュース

楽天開設のNFTマーケットプレイス、テレビ朝日の映像NFT化し販売

楽天グループは2月9日、25日にサービス開始予定のNFTマーケットプレイス「Rakuten NFT」で、テレビ朝日が展開するNFTコンテンツの発売に合意したと発表した。

テレビ朝日がこれまでに制作してきた膨大なアーカイブや、今後取り組んでいく番組やイベントなどの中から映像をNFT化し販売する。スポーツの名プレーやバラエティー番組の名シーンなどの貴重映像をはじめ、さまざまなNFTコンテンツを展開していく予定という。

Rakuten NFTは1月、提供する初めてのコンテンツは円谷プロダクションが製作、販売するアニメ「ULTRAMAN(ウルトラマン)」のCGアセットを使用したNFTと発表している。

詳細:https://www.metaverse-style.com/trend/4592

ゲーム特化ブロックチェーン「Oasys」発表、バンダイナムコやセガも参画

ゲームに特化したブロックチェーン「Oasys(オアシス)」プロジェクトの発足が2月8日に発表された。Oasysブロックチェーンを利用することで、プレイヤーは高速かつガス代無料でストレスなくゲームをプレイすることが可能になるという。

設立メンバーとして、バンダイナムコ研究所代表取締役社長 中谷始氏、doublejump.tokyo 代表取締役CEO 上野広伸氏、gumi創業者・Thirdverse代表取締役CEO 國光宏尚氏、セガ取締役副社長 内海州史氏や、Yield Guild Games共同創業者 Gabby Dizon氏が参画している。

doublehump.tokyoが開発・運営するブロックチェーンゲーム「BRAVE FRONTIER HEROES」、「マイクリプトサーガ」が今後Oasysに対応予定とのことだ。MCH株式会社が運営するブロックチェーンゲーム「My Crypto Heroes」も、Oasysを活用した独自ブロックチェーン「MCH-verse」を発表した

世界自然保護基金(WWF)がNFT販売を停止 環境保護観点の反発が理由か

世界最大規模の自然環境保護団体である国際NGO「世界自然保護基金(WWF)」の英国支部は、2月3日にチャリティーのためNFTシリーズ「Non-Fungible Animals」の販売を開始したが、2月5日に販売を停止した

WWFが販売を予定していたNFTの一例

WWFは詳細な理由を述べていない。しかし、NFTの発行に際して、ブロックチェーンが莫大な電力を消費するという懸念の声が寄せられたことが背景にあるとの見方もある。

WWFは、同NFTの発行にあたってPolygon(ポリゴン)ネットワークを利用しており、「1回のNFT取引の炭素排出量はコップ1杯の水道水と同じ程度であり、環境に優しい」と主張していた。しかし、SNSでの反発や「Polygonネットワークの炭素排出量は、実際はWWFの見積もりの2,100倍に上るのではないか」といった批判が見られた。

WWFはディスコ―ドでのコミュニティチャットで下記のように説明している。

この度、2月4日(金)の夜をもって、このトライアルを終了することをパートナー各社と合意しました。 私たちは、NFTが多くの議論を呼んでいる問題であり、この新しい市場について学ぶべきことがたくさんあることを認識しています。

米映画館「ザ・バットマン」前売券購入者に限定NFTを配布 

米国で3月4日より上映開始の映画「THE BATMAN(ザ・バットマン)」の前売券を購入し映画を鑑賞した人を対象に、限定NFT「THE BATMAN NFT」が配布されることが2月7日分かった

同NFTは、配給元の米ワーナー・ブラザース・ピクチャーズと、米映画館チェーンのAMCエンターテインメントの共同プロジェクトとなる。NFTにはレアリティが異なる全16種類が存在するとのこと。

AMCエンターテインメントは、2021年12月に「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」の事前チケット購入者約8万6000人にNFTを配布している

Gucciがメタバース上の土地「LAND」を購入、ファッション特化空間を構築

イタリアの高級ファッションブランドGucci(グッチ)は 2月9日、香港のブロックチェーン企業Animoca Brands(アニモカブランズ)傘下のNFTゲーム「The Sandbox」の、メタバース上の土地「LAND」を購入したと発表した。NFTなどを扱うGucciの新しいオンラインコンセプトストア「Vault」をベースに、ファッションに特化したメタバース空間を構築するという。

詳細:https://www.metaverse-style.com/fashion/4601