【NFT Weekly】mixiとDAZNがスポーツNFT/北京オリンピックでNFTゲーム/解説:スポーツNFT「NBA Top Shot」 とは?

2022/02/06
NBA Top Shotで販売予定のパック

NFT Weeklyでは、過去1週間のNFTに関するニュースの紹介と、編集部が今週注目しているトピックの解説を行う。今週は、ミクシィとDAZNがスポーツNFTマーケットプレイスを準備、北京オリンピック公式のNFTゲームがリリース、米GameStopがImmutable Xと提携するも、IMXを大量売といったニュースがあった。

注目トピックでは、スポーツNFTの火付け役となった「NBA Top Shot」ついて解説する。

【目次】

  1. 今週のNFTニュース
    ミクシィとDAZNが共同でスポーツNFTマーケットプレイス提供 今春を予定
    北京オリンピック公式のNFTゲームがリリース
    米GameStopがNFTマーケットプレイスに向けてImmutable Xと提携 IMXの大量売却による下落も
    東映アニメーション、9歳少年のNFTアート「Zombie Zoo」をアニメ化へ
    最古NFTコレクションCryptoPunksの初版論争
  2. 今週の注目トピック:スポーツシーンNFT人気の火付け役「NBA Top Shot」とは?
    NBA選手のデジタルトレーディングカード
    NFTで発行されるため、正規品の確認や取引が容易
    人気の背景は市場規模の大きさと資産性の高さ
    まとめ

1.今週のNFTニュース

ミクシィとDAZNが共同でスポーツNFTマーケットプレイス提供 今春を予定

「mixi」や「モンスターストライク」を手がけるミクシィとスポーツ・チャンネル「DAZN(ダゾーン)」が提携し、スポーツ特化型NFTマーケットプレイス「DAZN MOMENTS」を2022年春より提供する。2月4日DAZNが発表した

DAZN MOMENTS公式サイト

DAZN MOMENTSでは、スポーツ選手のスーパープレーやメモリアルシーンの映像を元にした動画を、NFTコンテンツとして提供する。まずはNFTコンテンツの収集が可能となり、段階的にユーザー同士でコンテンツを売買できるマーケットプレイス機能や、コミュニティとして楽しく集まれる場の開設といったアップデートを行っていく予定だ。

NFTの情報を記録するブロックチェーンとして、Dapper Labs(ダッパー・ラボ)の提供するFlow(フロー)を利用するとのことだ。

北京オリンピック公式のNFTゲームがリリース 

2月3日、北京オリンピック公式のスマートフォンアプリゲーム「OlympicGames Jam:Beijing 2022」がリリースされた。香港のブロックチェーン企業Animoca Brands(アニモカブランズ)の子会社nWayと国際オリンピック委員会(IOC)が共同で開発しており、ゲームをプレイすることでNFTや、仮想通貨に交換可能なGem(ジェム)を稼ぐことができる。

同ゲームでは、オリンピックの種目である「スノーボードクロス」や「スロープスタイル」「スケルトン」などをプレイヤー同士で同時に遊び、競うことができる。プレイヤーは、ゲームで遊んだり勝利することで、過去のオリンピック大会マスコット等をモチーフにしたNFTピンバッジやGemを入手できる。

ゲームで入手できるNFTの例(出典:https://olympicgamesjam.nwayplay.com/#main)

米GameStopがNFTマーケットプレイスに向けてImmutable Xと提携 IMXの大量売却による下落も

米ゲーム小売り大手のGameStop(ゲームストップ)は2月3日、NFT関連事業会社のImmutable Xとの提携を発表した。NFT マーケットプレイスを今年後半に立ちあげ、NFTクリエーターや技術者を助成する最大1億ドル(約114億円)のファンドも創設する。

GameStopはImmutable Xよりビジネス目標の達成に応じてIMXトークンを付与される予定。Etherscanによれば、GameStopは既に約3,700万IMX(約110億円)を付与されたが、そのうち約1,500万IMX(約48億円)を2月4日に売却したことが明らかになった。この大量売却により、IMXの価格は465円程度から345円程度へと、約30%下落した。

参考:metaverse-style.com/game/4423

東映アニメーション、9歳少年のNFTアート「Zombie Zoo」をアニメ化へ

東映アニメーションは1月31日、9歳の少年によるNFTアートコレクション「Zombie Zoo」を原案にした新しいアニメプロジェクトの立ち上げを発表した。NFTアートのアニメ化プロジェクトは日本初という。

「子どもはみんなクリエイター」を掲げ、子どもが持つ既成概念に囚われない自由なクリエイティビティーを、テクノロジーとインターネットの活用によってそのままアニメ化するプロジェクト。子ども達によるクリエイティビティーを応援する。

詳細:https://www.metaverse-style.com/art/4325

最古NFTコレクションCryptoPunksの初版論争

約2300億円がこれまで取引されている、最も人気のNFTコレクションのひとつ「CryptoPunks(クリプトパンクス)」コミュニティで、初版に関する論争が起こった。CryptoPunksはブロックチェーン企業Larva Labsが2017年に発行した、計1万個の最古のイーサリアムNFTコレクションだ。

Larva Labsは2017年にCryptoPunksを一度発行したが、1万体を販売した後に、スマートコントラクトのバグを発見。その後に再度発行し直したのが、現在知られているCryptoPunksとなる。失敗した初版(V1)の存在は忘れられていたが、2022年1月にリリースしたNFTマーケットプレイス「LooksRare」がV1を安全に取引できるようラップしたNFTの販売を許可したことで話題となり、2月5日現在総額約28億円が取引されている。

Larva Labsは1月26日、「V1 Punks は公式のCryptoPunksではありません。私たちはV1を好きではなく、また1,000個持っています…収益は本物のCryptoPunksの購入に利用されます。」と、V1の大量売却をほのめかすツイートを投稿した。

これには、「V1こそオリジナルである」「NFTやWeb3の思想に反している」など否定的な意見が飛び交った。

Larva LabsのMat Hall氏は2月3日、V1 Punksを売却し、約6,300万円の利益を得たとdiscordで公表しつつ、売却を「悪い判断だった」と謝罪している。

2.今週の注目トピック:スポーツシーンNFT人気の火付け役「NBA Top Shot」とは?

今週は、ミクシィとDAZNが共同でスポーツコンテンツNFTマーケットプレイス「DAZN MOMENTS」を今春に立ち上げる予定との発表があった。2021年12月には、メルカリとプロ野球パ・リーグが提携し、NFTコレクション「パ・リーグ Exciting Moments β」を立ち上げるなど、日本ではスポーツプレー映像やメモリアルシーンを元にしたNFT動画コレクションのリリースが続いている。

スポーツNFTの先駆けとなったのは、米プロバスケットボールリーグのNBAとブロックチェーン企業Dapper LabsがNBAと提携して運営する「NBA Top Shot」というNFTコレクションだ。NBA Top Shotは2020年10月に販売が開始され、現在までの取引総額は約1,000億円に上る

今回は、NBA Top Shotとは何か、人気の背景はどこにあるのかについて取り上げる。

NBA選手のデジタルトレーディングカード

NBA Top Shotは、NBA選手のデジタルトレーディングカードだ。カードには、試合の名シーンのハイライト映像が動画として格納されている。

レブロン・ジェームズ選手のカード例

各カードには、紙のトレーディングカードと同様にレア度が付与されており、「コモン」「レア」「レジェンダリー」の3種類が存在する。「レア」や「レジェンダリー」のカードは高値で取引されており、中には2億円を超える金額で取引されたカードもある。

販売はパック単位で、1パック当たりの封入枚数はパックによって異なるが、数枚程度となっている。パックに入っているカードは特定のカード群からランダムに選ばれており、開けるまで何を引くかが分からない。

NFTで発行されるため、正規品の確認や取引が容易

各カードはDapper Labsの開発する「Flow(フロー)」というブロックチェーンを利用し、NFTとして発行されている。発行記録や取引の記録はすべて公開され、「Flow Blockchain Explorer」などのサイトで見ることができる。これにより、紙のトレーディングカードに比べて下記のようなメリットがある。

カードが偽造品でなく正規品であることを容易に証明・確認できる

紙のトレーディングカードでは精巧な偽物と本物を見分けるのは難しい。NBA Top Shotでは、発行元の証明が付いているため、カードが正規品かどうかを見分けるのが容易である。

誰でも自分や他人が保有しているカードの数や種類をデジタルで証明・確認できる

デジタルで管理できるため、自分の保有カードを確認・証明することが容易である。また、他人がどのようなカードを保有しているかも確認できる。

各カードの総発行数が公開されている

NBA Top Shotでは、各カードの発行枚数も公開されており、各カードがどの程度レアなのかを実際の発行枚数をもとに確認できる。

低手数料・査定いらずで二次売買できる

紙のカードを二次取引する際、カードショップやメルカリのようなフリーマーケットを通じて売買すると、手数料や送料が高くなったり、販売の手間がかかる。NBA Top Shotでは、NBA Top Shotに支払う二次取引の5%の金額+ブロックチェーンネットワークに支払う1円未満の手数料で取引ができる。また正規品の証明が容易であるため、査定の時間もかからない。

人気の背景は市場規模の大きさと資産性の高さ

①NBAトレーディングカードの持つ大きな市場

NBAのトレーディングカードは、NBAの前身であるBAA(バスケットボール・アソシエーション・オブ・アメリカ)時代の1948年に初めて販売され、70年以上の歴史を持っている。現在、スポーツカードの市場は年間約54億ドル(約6,210億円)以上との試算もあり、その中でNBAカードは最も主要なコレクションのひとつである。

元々大人気のNBAトレーディングカードが、NBA Top Shotによって動画で名プレーをよりリアルに楽しめるようになり、またデジタルで便利に扱えるようになったと考えると、開始から1年3ヶ月程度で約1,000億円の取引額も不思議ではない。

②NFTで強化される資産性

NBA Top Shotは、紙のNBAカードよりも資産性が強化されている。

トレーディングカードは、従来の紙の形式でも高値で二次売買されることがある。NBAカードだけでなく、ポケモンカードや遊戯王カードなどでも、レアなものは1枚数万円~数百万円で取引されることがある。そういう意味では、元々トレーディングカードには資産性がある。

しかし、トレーディングカードを現金化するには、店舗への移動や査定、あるいは送付の時間と料金がかかる。また、海外の人と取引するためにはeBAYなどを利用する必要があり、時間とコストがいっそう必要だ。そのためトレーディングカードは株や為替よりも流動性が低く、売りにくい資産といえる。また劣化させずに保管するには相応の注意を払って扱い、保管の場所も確保しなければならないため、保管コストも馬鹿にできない。

NBA Top Shotは、デジタル化によってそうした問題を解決し、資産として扱うことが容易になっている。瞬時に売買できるため売りやすく、保管コストや劣化リスクもない。また海外のコレクターに販売することも容易で、流動性が高い資産になる。

こうした点で、NBA Top Shotの資産性は紙のカードよりも強化されている。あっという間にパックが売り切れるのは、コレクション目的のみならず投資目的でも購入されるのも一因だと思われる。

まとめ

NBA Top Shot成功の背景には、上記で見たように元々大きな市場規模と高い資産性がある。日本では野球をはじめとするスポーツNFTが注目されているが、日本のスポーツカード市場規模は不明で、おそらくアメリカほどスポーツカード市場は成熟していないと考えられる。そのため日本でスポーツNFTを提供しても、NBA Top Shotのような人気を得られるとは予想しにくい。また海外展開がなければ、二次売買の流動性も限られたものになってしまう。


一方で、一般社団法人日本玩具協会の調査によれば、日本のトレーディングカード市場は2019年から2020年にかけて約7%伸びており、今後市場規模が拡大していく可能性もある。スポーツNFTの今後がどうなるか、注目したい。