中国NFTとメタバース”伝統回帰”と”多様化”へ 過去動向と2022年予測

2021年のテック業界を大きくにぎわせたNFTとメタバース。米Facebookの社名の「Meta」への変更を皮切りに、世界でも大きく注目を集めたといえるが、世界第2位の経済大国となった中国でも急速に市場の拡大が進んだ。今回は21年の中国NFTとメタバースについて振り返りと、2022年の予測を行っていきたい。
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■知名度の爆発的な向上
21年3月、中国国営放送の中国中央電視台でNFTの特集番組が放送されていた。中国の動画サイト「哔哩哔哩-bilibili」でも多数のNFT解説が有識者によって取り上げられ、11月時に再生数が280回だった動画が、現在は340万回に伸びる勢いで伸びている。メタバースは中国中央電視台では9月には取り扱われていたが、21年10月以降、Meta社の改名を機に多くのメディアで本格的に取り上げられ始めた。
既にNFTは「数字藏品」、メタバースは「元宇宙」という訳語が設けられているが、英語名称がそのまま使用されている例も多く見られる。この訳語がすべての媒体で統一されるときが、中国における両概念が一般にも広く認知された証となるだろう。
概念が急速に浸透する中、すでに中国のテックジャイアント、ネットサービスの騰訊控股(テンセント)や中国EC最大手アリババ集団などはNFTコンテンツの販売や、メタバース世界の構築に向けて動きを加速させつつある。
NFTコンテンツ販売という意味では、テンセントの「幻核」とアリババの「螞蟻鏈粉絲粒」の2プラットフォームはほぼ同時期に設立された。両社とも中国のデジタルプラットフォーマーという点で、同じ立ち位置にあるといえる。大きく差が生まれ得るのは、メタバース領域においてだろう。
現在メタバース領域の多くが、オンラインゲームの延長線上にある仮想世界と強く結びついており、従来オンラインゲーム領域で事業形勢をしていたテンセントが一歩先を行く印象にある。テンセントはすでに、オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」の運営元をはじめとするメタバース企業に投資をしているの対し、アリババは関連企業、元境先生の立ち上げ以来、目立った動きを見せていない。
■メタバースには好意的な中国政府
産業界から大きな注目を集める中、現在の動向へ理性的な対応を求める政府通知や各媒体の報道も増えている。中国国内の行政指針や政府報告を告知する政府系機関、中央纪委国家监委は12月23日に、政府報告書を発表した。

論調は、メタバースやNFTについて社会をより良い方向へ変化させる可能性があるとして好意的だ。特に「メタバースやNFTは単一で存在しているものではなく、広範囲な産業の成長が必要不可欠だ」という、産業育成の重要性を提起している点は、中国産業界全体への波及を期待してのものだろう。半面、「12月現在、中国国内のメタバース商標を習得した企業は4300件以上になるが、その内99%が今年成立した」という一文からは、市場の急速な過熱への警鐘と読み取ることができる。
メタバース産業を利用した投資セミナーや、NFTコンテンツの投機行為などは中国国内でもすでに確認されている。その状況に加えて暗号通貨などが規制されている中国では、それらとの混同を避ける試みがされている。NFTも暗号通貨を連想させる「非同质化代币」という中国語の訳語使用を、控えつつあるようだ。
■”伝統回帰”のNFT メタバースはテックジャイアントに注目
認知され始めてから2年目を迎える中国NFTとメタバース、では22年に向けてどのような動きが注目されているのだろうか。
NFTは民間だけではなく、政府関係や公的領域での導入が進みつつある。22年は北京での冬季オリンピック開催が控えており、公式NFTの販売が12月24日に発表された。プラットフォームはアリババが提供しているが、販売されているのは中国の国際スポーツ全般と伝統文化を掛け合わせた意匠のNFTが中心。「体育梦传承(受け継がれるスポーツの夢)」と名付けられた作品たちは、中国で近年提唱されているスポーツスローガンと同一の内容だ。
NFTコンテンツの売り手と買い手を結びつけるプラットフォーム「红洞数藏」の立ち上げや、NFTクリエーターの増加も、連日報道されている。
NFTコンテンツそのものは、トレンドである「国潮(中国伝統文化を取り入れた国産品)」を掲げたコンテンツがますます増加しつつあるようにみえる。中国各地の17博物館が「宝藏计划(宝蔵計画)」という名称で、古典絵画や歴史的美術品のNFTに関して販売する準備を進めている。アリババやテンセントのプラットフォームで発売となりそうだ。

メタバースについては、そのサービスなりの世界観を構築しなければいけないため、参入障壁の高さがある。そのため、既存参入企業の動向が重要になってくるだろう。
個々のテックジャイアントの取り組みについては、以下の過去記事を参照してほしい。
一足遅れた中国メタバース、百度(バイドゥ)など進出加速 中国メタバース動向(1)
メタバース観光地登場、官公庁も協同 拙速さに批判の声も 中国メタバース動向(2)
最近はメタバースで展開されるサービスも多様化がすすんでいる。年末年始に注目されたのは、テンセント旗下の音楽配信サービス、「QQ音乐(QQミュージック)」によるTMELANDだ。

TMELANDは、世界中のミュージシャンたちに個人のアバター、バーチャルライブスペースなど音楽活動に活用できるサービスを提供する。テンセント自身による本格的なメタバース世界の構築に加え、強みといえるゲーム分野ではなく、音楽分野を起点とするのが意外ともいえる。
12月31日から元旦にかけては、 TMELAND 上で年越しイベントを開催。およそ10万人が同時にオンラインになり、最大で110万人が参加したという。
前述の中央纪委国家监委の報告書にあるように、NFTもメタバースも、複数の産業の成長の下で成り立っていく領域である。下地となる産業は中国では近年も成長を続けている。深圳中商产业研究院(Shenzhen Zhongshang Industry Research Institute)の報告によると、中国国内VR市場は20年の414億元から22年には791億元と、倍近い市場規模となると見込まれている。すでに巨大産業である中国オンラインゲーム市場も、20年の2787億元から22年には3679億元とまだまだ成長が続く見込みだ。
多様化と需要という観点から、22年も中国のNFTとメタバース領域から目が離せそうにない。
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