戦略さまざま 閉じるアリババ、グローバル化のバイトダンス 中国NFT動向(2)

NFTが世界中の注目を集めた2021年。中国においてもNFTに対する注目と、各企業による参入進出が相次いでいる。前回に続き、テンセント以外の巨大デジタル企業がどのような動きを見せているかについて解説する。
第1回はこちら:仮想通貨禁止もブロックチェーン技術は推進 テンセントは独自プラットフォーム 中国NFT動向(1)
■アリババも始めたNFTプラットフォーム
中国国内でテンセントに対をなす巨大デジタル企業にして、多くのデジタルエコシステムを司るアリババグループ。NFTに関しては、テンセントよりも早く多様な試みを始めている。
2021年6月からは、アリババグループの重要なモバイルペイメントアプリ「アリペイ(支付宝)」でNFTコンテンツを取り扱うNFTマーケットプレイス「螞蟻鏈粉絲粒」始めた。螞蟻鏈粉絲粒ではすでに12種のNFTコンテンツが販売されているだけではなく、ユーザー同士の譲渡やオークションも可能だ。

「螞蟻鏈粉絲粒」を支えるブロックチェーン技術も、アリババグループの一員で、2017年に設立された「Ant Chain」が担っている。これ自体は2017年に設立された会社で、従来はブロックチェーン技術を用いて食品や衣料品のトレーサビリティシステムを構築する会社だった。

販売されているNFTは、中国の伝統的な意匠やデザインのものが中心。中国国内では近年、中国文化ルネッサンス(再興)を掲げた「国潮運動」が盛んでその影響があると思われる。龍や人物画などの題材は、中国外のNFTマーケットで取引されているデジタルアートとは大きく異なった印象を与える。
販売期間は1日から3日などの短期間に区切られており、数千個もしくは数万個完売したという表示があるNFTも多いことから、売れゆきは好調なようだ。

「開かれたNFTプラットフォーム」を掲げている同NFTマーケットプレイスは、6月には「青年芸術家デジタルアートオークション」を開催。若手アーティストに対してNFTマーケットを開かれたものにする、という姿勢が感じられるとのだが、同時に、NFTコンテンツの権利保護だけでなく、中国国内法の順守についても強く押し出している。
前述のAnt Chainは、企業声明として「いかなる形であっても、NFTデジタルコンテンツへの投機行為、NFTの名前を借りた仮想通貨などの中国国内法に反する違法行為、デジタルコンテンツを金融商品へ変換する行為に強く反対する」と宣言している。実際に同社のNFTマーケットプレイスの使用に際しては「NFTコンテンツの譲渡は保有から180日以降のみに可能」「コンテンツの譲渡は基本的に無償」「譲渡にあたっては実名が判明しているユーザーのみ可能」とされており、NFTが持つ投機商品としての側面はほぼ打ち消されているといえるだろう。
中国国内には、こうした各プラットフォームの転売規制をかいくぐろうとする動きももちろんある。
例えばオフィシャルページで、元値39元(約700円)程度で販売されていた「杭州アジアゲームズカップの聖火トーチNFT」については、ECサイトのタオバオやいくつかのフリマアプリなどで転売しようとする一次購入者もいた。筆者は300万元(約5400万円)の値段が付けられていた転売NFTのスクリーンショットを目にしたことがあるが、その時にはすでにECサイト上からは同商品は削除されていた。
NFTの投機や営利転売に対しては、今年10月に中国の金融庁に該当する機関から通達が出ている。詳細は次の記事で触れるが、今後どのような対策が進められるかについては引き続き中止すべきだろう。
■初めからグローバルを見据える Bytedance
テンセント、アリババに続いて、中国国内では比較的後発にも関わらず、デジタルエコシステムを創り上げつつあるBytedance(バイトダンス)。同社もすでにNFT領域へ進出を始めた。
もっとも、前述の2大巨頭のデジタルエコシステムは、「Wechat」のようなコミュニケーションアプリのほか、「WechatPay」「Alipay」といったモバイルペイメントと連動して、公共サービスやフィンテック領域に足を踏み入れている。それと比較すると、Bytedance の進出領域はTikTokに代表されるショートムービー領域などに限られているとはいえるだろう。
Bytedanceが10月1日に発表したNFT領域への進出もその一環であり、TikTokの発展形といえる。「TikTok Top Moments」と命名された同事業シリーズは、TikTokで動画コンテンツを制作・投稿しているクリエイターがNFT形式でコンテンツを作り、投稿できるサービスだ。
ちなみに、 Bytedanceの中国国内向けショートムービーアプリは「抖音(Douyin)」であって、TikTok自体、中国国内からは公式にアクセスすることができない。 同コンテンツを作成しているクリエーターに関しても、中国国外在住と見られるクリエーターが多数を占めている。
同プラットフォームで使われるNFTの発行には、イーサリアムのレイヤー2スケーリングソリューション「Immutable X」が使われている。NFTに活用するブロックチェーン技術については、8月に提携した米サンフランシスコのAudius社が協力する。これらのことからも、中国国外に対するサービス提供、中国外のユーザーを主眼に入れていることが見て取れる。

すでに中国の大手デジタルエコシステム企業3社がNFT領域事業を開始するさまは、かつての三国志を彷彿とさせる。しかしTikTokが従来から海外市場に活路を見出してきたように、3社の間では今後棲み分けが進んでいくのかもしれない。また、中国政府が今後、NFTやメタバースに対してどのような姿勢を打ち出していくかももちろん重要だ。
■新プレーヤーの台頭か?それとも統合か?
2010年以降、中国テック産業はすさまじいスピードと投資規模で様々な”流行り廃り”を繰り返してきた。モバイルペイメント、デリバリーサービス、オンライン教育など多種多様なプレーヤーが生まれる中で、生き残るためには該当事業で赤字を垂れ流してでも継続される、熾烈な販促キャンペーン合戦を勝ち抜く必要がある。
さらに、大手企業による同領域の中小企業やスタートアップの買収や投資などを通じて、乱立していたサービスが大企業及びその傘下に集約される傾向がある。NFTに関しても、今後複数のサービスが統合の動きを見せる可能性は大いにあるだろう。

閉じた市場と見られがちな中国だが、2021年の5月に立ち上げられたNFTコミュニテイ「NFT China(NFT中国)」のように、中国国内外にNFTをプロモーション、販売するプラットフォームとして活動を始めた団体もある。
同団体はメタバースのさらなる発展も目標に掲げており、すでに5000人のクリエイターと10万人のユーザーが集まっている。コミュニティとしては存在感を見せ始めているものの、いずれ中国NFT市場で、テックジャイアント企業との熾烈な競争に直面する可能性が高いかもしれない。
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