【基礎から解説】Web3.0とは何なのか Web2.0、Web1.0との違いは?
メタバースやNFTについて調べると、「Web3.0」という言葉に出合うことがあるだろう。この記事では、Web3.0とは何か、私たちの生活がどう変わるのかについて解説する。
目次
- Web3.0とは
- Webの歴史と変遷
2-1.Web1.0: ウェブ黎明期
2-2.Web2.0: プラットフォーム集権 - Web2.0の問題点
- Web3.0: 分散型ウェブ
4-1.Web3.0を可能にするブロックチェーンとは
4-2.Web3.0の特徴 - Web3.0で何が変わるか
5-1.金融の分散化
5-2.クリエイターエコノミーの登場
5-3.ウェブ体験が広告なしに
5-4.デジタルアートやゲームの価値向上
5-5.働き方がプロジェクト単位に - まとめ
1.Web3.0とは
Web3.0とは、Web1.0およびWeb2.0に続く、インターネットの潮流や概念を指す言葉だ。ブロックチェーン技術がもたらす「分散型ウェブ」がWeb3.0の特徴と言われるが、もう少し詳しく見てみよう。
一般的にはインターネットの黎明期を「Web1.0」として、そこからGAFAなどの大企業の巨大プラットフォームが権力を握る「Web2.0」に続く、分散型のウェブがWeb3.0である。Web3.0は、情報の管理やアクセスを大企業プラットフォームに依存せず、個人同士がつながり、それぞれが選択する権利とその責任を持つという特徴がある。
それぞれの詳細について詳しく見ていこう。
2.Webの歴史と変遷
2-1.Web1.0: ウェブ黎明期
一般的に、ウェブが誕生した1989年から、2000年代前半までのウェブ黎明期をWeb1.0と呼ぶ。
1989年に、「ウェブの父」と呼ばれるティム・バーナーズ・リー氏によってワールドワイドウェブが考案され、1990年には、世界最初のウェブサイト「http://info.cern.ch/」が公開された。こうして現在のように誰もがインターネットを利用できるようになっていった。
1999年に、ウェブデザイナーのダルシー・ディヌッチ氏が雑誌『Fragmented Future』に掲載された記事で、Web1.0の次のインターネット世代を「Web2.0」と定義したことから、翻って「Web1.0」の概念が生まれた。
ディヌッチ氏は、記事の中で当時のウェブは「まだ実証実験の段階である」とし、ウェブは「単なる文字と画像をスクリーンに移すものではなく、相互作用が起きるための媒介であり移動の手段と理解されるべきだ」と述べている。
Web1.0では、ウェブサイトの多くは現在のようにリッチで動的なものではなく、静的で用途も限られていた。また情報は受け手から送り手に一方向性的に流れるのみで、現在のSNSのように誰でも双方向的に気軽に情報を発信することができない、という特徴がある。
ウェブを取り巻く環境
というのも、2000年代前半ごろまでは、今のようにはスマートフォンが普及しておらず、デスクトップパソコンや、「ガラケー」と呼ばれる携帯電話などを利用する場合が多かった。また光回線がまだ普及しておらず、インターネットにつなぐには、電話回線を利用したダイヤルアップ接続を利用するのが一般的で、今のように高速で大容量のデータをやり取りすることはできなかった。
そのため、インターネットはテキストベースのWebページを閲覧したり、簡単なメール・チャットをするため使ったりするのが主流だった。また個人が発信するための手段も限られていたため、情報を発信できるのは一部の人々に限られていた。
代表的なサービス
インターネット接続機能が搭載された「Windows95」が登場したことで、個人が気軽にインターネットを利用できるようになる。またGoogle検索(1997年~)、Yahoo! JAPAN(1996年~)、iモード(1999年~)といったサーチエンジンやポータルサイトが登場して、様々なWebページにアクセスできるようになった。MSNメッセンジャー(1999年~)などのテキストチャットも用いられた。
特徴
ティム・バーナーズ・リー氏は、初期のWebコミュニティの特徴として「分散化」「無差別」「ボトムアップ設計」「普遍性」「コンセンサス」の5つを挙げている。すなわち初期のウェブでは、監視者なしに誰でも何でも投稿できて、専門家だけではなく普通の人々が参加し、ウェブを通じて世界中の人々が交流できるといった特徴があった。
Web1.0では、前述のようにできることは限られていたが、一方で民主的なインターネットの精神が実現されていたと言えよう。
2-2.Web2.0: プラットフォーム集権
Web2.0は、2000年代半ばごろから現代まで続くウェブの潮流だ。多様な便利なウェブサービスが登場して誰でも情報発信を気軽にできるようになったが、一方でGAFA(Gooogle、Apple、Facebook、Amazon)といった大企業プラットフォームが大きな影響力を持つといった特徴がある。
ウェブを取り巻く環境
iPhoneが2007年にアメリカで発売されたことをきっかけに、スマートフォンが市民権を得た。また、ADSLや光回線の普及によって高速・大容量の通信が可能となった。このことによって日常的にインターネットに接続したり、画像や動画などを利用した洗練されたウェブを楽しむことが一般的になった。
また、クラウドサービスの登場によって、自社でサーバーなどのインフラを購入・維持せずとも少額・低リスクでウェブサービスをスタートできるようになり、多様なウェブサービスが誕生した。
これに伴ってTwitterやFacebook、LINEといったSNSサービスやブログサービス、Youtubeなどの動画配信サービスが普及し、個人が無償・低額で情報を発信できるようになり、双方向で参加型のコミュニケーションが生まれていく。
代表的なサービス
Youtube(2005年~)などの動画配信プラットフォームや、Facebook (2004年~)、Twitter(2006年~)などのSNS、アメーバブログ(2004年~)やnote(2014年~)といったブログサービス、Google Chrome(2008年~)などのブラウザなどが挙げられる。リスティング広告(2002年~)をはじめとするウェブ広告もWeb2.0を代表するサービスといえる。
特徴
ティム・オライリー氏は、Web2.0の原則として「プラットフ ォームとしてのウェブ」を挙げている。プラットフォームでは、まずはユーザーを集め、そのデータを得ることが非常に重要となる。
たとえばGoogleは無料で検索サービスを提供することによりユーザーを集め、ユーザーの検索データを利用して広告主から手数料を受け取っている。Facebookも同様に、無料で使えるSNSでユーザーを拡大し、そのデータを広告主や企業に提供して利益を得ている。
こうした特徴を持つプラットフォームが大きな力を持つと、次に述べるような問題が出てくる。
3.Web2.0の問題点
1.大企業による個人情報の掌握
一部の大企業がユーザーの年齢や性別、住んでいる地域やWEBの検索・閲覧履歴、購買履歴、携帯番号やメールアドレス、時には名前や顔写真まで含む膨大な個人情報を持っており、ユーザーの知らないところで、こうした情報をマーケティングに利用したり、ビッグデータとして販売するといったことが起きている。
たとえば、2018年には、Facebookを通じて収集された約8,700万人のデータが、イギリスの政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカに流出していたことが発覚した。個人情報は、2016年のアメリカ大統領選挙に利用されたのではないかという疑惑まで持ちあがっている。
近年ではGAFAなど、プラットフォームを運営する各社はアカウント作成時等にデータの各種利用許諾を得るように徹底している。しかしひとたび流出事件やハッキングが起こってしまうと、被害を防ぎようがない。
企業が個人情報をどこまで収集・利用してよいのか、ユーザーが自分自身で管理・決定できないというのが、Web2.0の大きな問題である。
2.プラットフォーム独占による不利益
一部の大企業がプラットフォームを独占している状態では、そのプラットフォームが強い権限を持つため、サービス提供者・利用者が不利益を被ることがある。
たとえば、スマートフォンアプリでは、アップルのApple StoreとグーグルのGoogle Play Storeの2つのプラットフォームが市場のほぼ全てを握っている。このため、アプリを提供する開発者は、アップルやグーグルがある日突然自分のアプリが、一方的な規約変更などでアプリストアから取り下げられてしまうリスクにさらされている。
また、ユーザーがアプリ内課金を行った場合、規約によってアップル社やグーグル社に課金額の約30%の手数料を取られてしまうが、アプリ開発者はこうした不利な条件も呑まざるをえない。
実際、2021年9月には米Epic Games社の提供する人気ゲーム「フォートナイト」が、アップル社への30%の手数料支払いを不正に回避したとして、Apple Storeから削除されるという事件が起きている。
3.障害・ハッキングリスク
Web2.0ではデータの保存や処理が一か所のクラウドに集中するため、特定のサーバがダウンするとサービスが使えなくなってしまうという単一障害点のリスクや、特定企業へのハッキングによって膨大な量の個人情報が一度に漏洩してしまうリスクがある。
たとえば2019年8月には、日本で約5割の市場シェアを持つクラウドサービスであるアマゾンウェブサービス(AWS)に障害が生じ、スマホ決済サービスの「PayPay」や楽天のフリマアプリ「ラクマ」をはじめとする多くのサービスが一時的に利用できなくなった。
4.Web3.0: 分散型ウェブ
こうしたWeb2.0の問題を解決するものとして、2010年代後半からWeb3.0という言葉が使われるようになった。背景には、ブロックチェーンをはじめとする分散技術の登場がある。Web3.0は、GAFAをはじめとする巨大プラットフォームが支えるウェブではなく、ユーザーや開発者を主体とする分散型のウェブである。
Facebook、Slack、Airbnb、GitHubといった名だたるウェブサービスに投資しているベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツのクリス・ディクソン氏は、Web3.0について下記のように述べている。
私たちは今、web3の時代の始まりにあります。これは、web1の分散型でコミュニティが管理する精神と、web2の高度で最新の機能を組み合わせたものです。
https://future.a16z.com/why-web3-matters/
Web3は、開発者とユーザーが所有するインターネットであり、トークンで組織化されています。
4-1.Web3.0を可能にするブロックチェーンとは
ブロックチェーンは、特定の管理者なしに、改ざんや巻き戻しを防ぎながらデータを分散管理することを可能にする技術である。サトシ・ナカモトが2008年に発表した「ビットコイン:P2P 電子マネーシステム」という論文で考案された。
ブロックチェーンの詳細な仕組み:【基礎から解説】Web3.0の「ブロックチェーン技術」とは何か?
ブロックチェーンは様々な暗号技術や合意形成メカニズムの組み合わせから成り立っており、次のような特徴を持つ。
①記録の改ざん・巻き戻しが不可能
取引データは時系列順に格納されており、後から改ざんすることができない。
②公開データベース
すべての取引記録がインターネット上で公開されており、誰でも後から遡って確認することができる。
③管理者のいない分散システム
データの記録や移転、管理、システムの維持を特定のサーバや企業に依存しないため、障害やエラーに強い。
4-2.Web3.0の特徴
個人がデータを管理する
ブロックチェーンによって、情報は参加者によって分散して管理されるようになり、特定の大企業に集中しなくなる。ユーザーは、自分の情報がどの範囲にどのように公開されているのか、把握することができる。
特定の企業に依存せずにサービスを提供・利用できる
これまでは、サービスを提供しその方向性を決めるのは企業であり、個人は何かそこに不満があったとしても我慢するしかなかった。しかし、ブロックチェーンの合意形成の仕組みによって、サービスの方向性が参加者の提案や投票によって決定される分散型の組織(DAO:自律分散型組織)が可能となる。これによって力を持った一部の企業や個人がウェブを独占することが難しくなり、たとえば前述のApple StoreやGoogle Play Storeに依存するリスクが大きく軽減される。
障害点のない分散システムを実現
ブロックチェーンではデータの管理や処理がひとつの企業に依存していないため、障害に強いシステムが実現する。
5.Web3.0で何が変わるか
では具体的にはどのように私たちの生活が変わるのだろうか。Web2.0の課題であった「大企業による個人情報の掌握」「プラットフォーム独占による不利益」「障害・ハッキングリスク」を解決しようと、様々なサービスやプロトコルが登場している。
5-1.金融の分散化
これまでは、個人の資産は銀行や信託銀行、証券会社といった企業を通じて運用・貸出されるのが普通だった。しかし前述のUniswapに見るように、Web3.0では企業を通さずにP2Pで金銭の貸し借りや資産活用を行えるため、金融アクセスの民主化につながる。たとえば富裕層や企業にのみ提供されていた金融商品に誰でもアクセスできたり、銀行が貸出を渋るような企業や個人が資金を調達できるようになる。
サービス例:Uniswap
特定の企業ではなく、ユーザーによって運営される暗号資産(仮想通貨)の分散型取引所。2018年からイーサリアム上で提供されている。参加者が自分の持つ仮想通貨を預け入れることによって資金プールが形成され、その資金プールを利用して通貨の交換を行うことができる。資金を預けることを一般に「流動性提供」と呼び、取引手数料の一部が、流動性提供者に分配される。
5-2.クリエイターエコノミーの発展
仮想通貨を利用することで少ない手数料で世界中どこでも送金が可能になるため、クリエイターが投げ銭やサブスクリプションといった直接課金で稼ぐことが容易になる。これにより、従来のようにプラットフォームに高い手数料を支払ったり、ある日突然アカウントがBANされるといったリスクを負ったりせずに、自由にコンテンツやサービスを提供し報酬を得ることができるようになる。また広告報酬で稼ぐモデルでは、広告主が不景気で広告費用を減らすと収入が減ってしまうというリスクがあるが、投げ銭やサブスクリプションで稼ぐモデルでは、そのようにいきなり稼げなくなるリスクも小さくなる。
サービス例:HiÐΞ(hide.ac)
和らしべ社により2021年から提供されている、分散型のブログサービス。ブロックチェーンを活用し、クリエイターが発信によって持続可能に稼げる運営主体なしのコミュニティプラットフォームを目指している。読者は投げ銭ができ、その還元率や手数料率をクリエイターが決定できる、記事データをクラウドやオフライン、IPFS等好きな場所で管理可能、コンテンツのNFT化ができるといった特徴がある。
5-3.ウェブ体験が広告なしに
Web2.0ではユーザーは無料でウェブサービスを利用できるが、その代わりに個人データが企業のマーケティングに活用されたり、毎日膨大な量の広告を見せられるといった問題があった。Web3.0では、個人が自分の情報提供や広告閲覧について選択権を持つ。
サービス例: 次世代ブラウザ:Brave
米Brave社が2019年から提供しているプライバシー重視の次世代ブラウザ。月間アクティブユーザーは3,000万人を超える。広告やトラッカー、クッキー、IPアドレスの収集などをブロックする機能を持つ。またユーザーは広告の閲覧を選択することもでき、閲覧した広告の量に応じて独自トークン$BATを受け取れる。
5-4.デジタルアートやゲームの価値向上
NFTやIPFS(後述)を利用すると、デジタルのアートやゲームアイテムを特定の企業に依存せずに所有することができるようになる。たとえば、遊んでいたゲームの運営会社が倒産すると、従来であれば課金して入手したゲームのキャラクターや資産はすべてなくなってしまう。しかしブロックチェーンを利用したゲームであれば、仮に運営会社が倒産しても記録はブロックチェーンに残っているため、ファンや他の会社が復活させるといったことも可能である。これにより、アートやゲームアイテムの資産性が向上する。
サービス例:イーサモン(Etheremon)
イーサリアムブロックチェーンを利用して提供されている、「ポケモン」のようなモンスター育成・バトルゲーム。2017年にEtheremonチームにより「イーサエモン」として開発・リリースされたが、2019年6月に資金難によりサービスが休止した。
しかし、残ったプレイヤーやファンが資金や技術を提供して新しい運営チームを立ち上げ、「イーサモン」と名前を変えてサービスが継続された。「イーサエモン」プレイヤーが持っていたキャラクターやアイテムは「イーサモン」でもそのまま利用することができる。現在はメタバースのディセントラランドでもイーサモンと触れ合うことができるなど、順調に開発・改善が進んでいる。
サービス例:IPFS(InterPlanetary File System:惑星間ファイル共有システム)
Protocol Labsにより開発された、P2Pのハイパーメディアプロトコル。これまでひとつのサーバに保存されていたデータが分散して保存・管理されるため、障害や検閲に強いという特徴を持つ。従来のウェブではある情報にアクセスしたいとき、「https:」から始まるURLを用いてサーバやディレクトリの場所を指定する(ロケーション指向)。一方IPFSでは参加しているサーバ間で情報を共有しており、情報にアクセスするために場所ではなくコンテンツIDを指定する(コンテンツ指向)ことで、ファイルが分散して保存されていてもアクセス可能となる。
5-5.働き方がプロジェクト単位に
Web3.0では、サービスは特定の企業ではなく「DAO(自律分散組織)」と呼ばれるコミュニティによって運営される。DAOではサービスの方向性が提案や投票によって決定され、開発やマーケティングといった運営に必要な仕事も、雇用によってではなく貢献に対してコミュニティが認めた報酬が発生する形をとる。そのため企業に所属するという働き方から、プロジェクト型で貢献して報酬を得るといった稼ぎ方に変わっていく。
6.まとめ
ブロックチェーンをはじめとする技術によって登場した、分散型の次世代ウェブをweb3.0と呼ぶ。Web3.0では、大企業プラットフォームではなく開発者やユーザーが情報や権利を持つ。これにより、ウェブはいっそうオープンで自由なものになり、消費者としての生活が変わるだけでなく、働き方や稼ぎ方もより多様になっていくだろう。
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