独身の日やクリスマス、イベント商戦の存在感は? 中国NFT動向(3)

2021/12/24
中国初のライブストリーミングによるNFTコンテンツ販売会

2回に渡って中国NFTの動向を紹介してきたが、最終回は独身の日やクリスマスといったイベント商戦に、NFTがどのように関与しているのかご紹介したい。

【連載はこちらから】
仮想通貨禁止もブロックチェーン技術は推進 テンセントは独自プラットフォーム  中国NFT動向(1)
戦略さまざま 閉じるアリババ、グローバル化のバイトダンス 中国NFT動向(2)

■クリスマスNFT登場も、存在感はイマイチ

まず、日本や欧米では存在感のあるクリスマス商戦で、中国のNFTはどのような存在感を放っているのだろうか。

結論から言ってしまうと、イマイチ盛り上がりに欠ける、というのが筆者の感想だ。クリスマス関連のNFTはちらほらと見かけるが、数はそう多くない。

例えば、12月24日の夜6時から、 NFTプラットフォーム「唯一艺术」で「故宮博物館」という名称で発売されるNFTはクリスマスセールに合わせた形だ。唯一艺术は以前から、伝統作品以外にもNFT化された現代アートを販売してきた実績がある。だが、 本作品の販売目的は、中国伝統文化と、来たる北京冬季オリンピックの プロモーションとされている。まだNFT写真入りの販促ページも見当たらないようだ。

国営通信社の新華社通信は12月24日の現地時間夜8時から11種類各1万個を限定販売する予定。発売されるNFTは、今年の未発表報道写真集だという。ところが奇妙なことに、他の複数の中国メディアが「新華社通信による販売」と報じているものの、当の新華社通信は大々的にPRしていない。

新華社通信の限定NFT販売に関する告知

また、アリババやテンセントといったテックジャイアントのNFTプラットフォームでは、執筆している12月上旬現在、その存在自体が見当たらないようだ。

その理由として、中国全土の「クリスマス自粛ムード」が影響していることは間違いないだろう。北京五輪が近付いていることもあってか、今年の中国は以前にも増してクリスマスの存在感が薄い。自治体によっては、中国の伝統文化に回帰すべきだとして、自粛を促しているところもある。

12月21日の冬至のほうが、NFT商戦もまだ盛り上がっていた印象だ。中国では「冬至は新年(春節)のごとく大切である」と言われるほどで、餃子や湯圓と呼ばれる餡入り茹で団子を家族で食べる習慣がある。クリスマスよりもはるかに重要なイベントなのだ。

■一大イベントは「独身の日」

クリスマスと比較すると、中国でははるかに大きな存在感を放っているのが「独身の日」だ。日本ではごく普通の日である、11月11日。しかし隣国中国、ひいては世界の電子商取引(EC)業界においては、1年で1番重要な日だ。世界最大のECイベント「中国独身の日ーー双11(ダブルイレブン)」が開催され、中国国内のデジタル企業はもとより中国消費者向けにコモディティーを扱う企業にとっては、売り上げや自社商品への注目が急増するからである。

中国証券日報網などによると2021年の双11は、中国EC最大手アリババ集団が運営するオンラインショピングサイト「天猫モール」だけでも、その売り上げ額は約5400億人民元(約9兆6000億円)。他のデジタルプラットフォーマーやオフライン消費も加ええれば天文的な規模な売り上げになるとわかるだろう。

中国国内の消費者にとってはもはや恒例行事だが、企業にとっては「何時間で前年の売上額を達成できるか」が双11の評価基準となっている。また売り上げに加え、物流コストの軽減や環境負荷の低減にも注目が集まっており、アリババグループは同社の声明によると390トンの二酸化炭素排出減少を達成したとのことだ。

その双11の大きな波の中でも、2021年はNFTコンテンツが存在感を放ちつつあった。

アリババや中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)ではすでにNFTを取り扱うプラットフォームやオンラインアプリが立ち上がっており、購入が容易になりつつある。しかし中国国内で市民権を獲得するまでには至っていない。

NFT産業の知名度を上げるためか、双11の販促期間にあたる11月5日には、中国初の「ライブストリーミングによるNFT販売会」が開催された。

中国では10年代前半から、EC販売促進策の一つとしてライブストリーミングを活用。ECプラットフォーム上で扱う商品について、実況者が品質などを紹介しながら販売していく。視聴者数が1000万人に迫る配信もあり、重要な販売プロモーションになっている。

初のライブストリーミングによるNFT販売会は11月5日の午後7時、ライブストリーミングの運営企業である杭州森之淼控股(森之淼)とアリババ傘下のオークションチャンネル阿里平台が協力して行われた。森之淼によると、2時間の放送においておおよそ2万人が常時動画を視聴し、5点のNFTコンテンツが購入された。

今回はオークション形式で販売されており、4300元(約7万6000円)で落札される商品もあった。大手ライブストリーミングコンテンツと比較すれば規模としてはまだまだ小さいが、NFTへの認知度向上という意味では、森之淼も阿里平台も、成功だったと認知しているようだ。

■プレミアム品としてのNFTと一般消費者の反応

双11のECセールとNFTの連動はテンセントグループでも行われた。一般への販売ではなく、自社社員へのNFTコンテンツの配布だ。11月11日はテンセントグループの創立記念日でもあり、21年は23周年にあたる。新浪の報道「腾讯司庆发放NFT藏品 它到底有什么作用」によると、72000枚のNFTコンテンツが社員へ配布され、多くの社員にとってはそれが人生初のNFT所有になったとのこと。NFTコンテンツはテンセントが運営するNFTコンテンツプラットフォーム「幻核」を通じて配布されており、その内1000枚は幹部社員を対象にした特別仕様だった。

同報道より画像引用

実験的な試みが巨大デジタル企業で続く中、双11のセールの中でも、一見NFTのように思える商品が、オンラインショピングサイト「淘宝(タオバオ)」から売り出されていた。しかし、郵送となっていることや、具体的な商品説明が一切ない点から、NFTを装った全く別な商品である可能性も高い。こうした類いの商品は過去に購入者がいないことから、多くの消費者が懐疑的に考えていることがみてとれた。

タオバオのキャプチャー

■「金融商品」とみなされることを防ぎたい各プラットフォーム

中国メディアでNFTが取り上げられる中で、暗号通貨をはじめとする仮想通貨とNFTの関係性は、否定されつつある。中国では投機対象になる仮想通貨は行政によって規制されており、仮想通貨との違いを強調する声明や発表も各NFTプラットフォーマーから出されている。

蚂蚁链による、数字藏品の取り扱いに関する声明

アリババ傘下のNFT関連企業「AntChain(蚂蚁链)」や幻核では、従来のNFTの中国語名「非同质化代币」から「数字藏品(※筆者訳、デジタルトレジャー)」への改名が進められている。仮想通貨との関係性への連想や、投機対象として誤解を避けるためだと考えられる。数字藏品は、中国国外と異なり転売やそれによる利益の追求などを制限する傾向にある。腾讯网の報道によると、10月後半から11月にかけて改名や声明が相次いだのは、中国の中央銀行である中国人民銀行からの指導や通達を受けたためとみられる。今後の中国NFTは、コンテンツ産業としての進化成長を目指すことで、金融商品とみなされることを防ぎたいと考えられる。