【基礎から解説】メタバースとは何なのか NFTとの関連性は?

2021/10/19

2021年7月、米Facebookが「メタバース企業になる」と宣言。そのことから、「メタバース」は日本でもバズワードになっている。しかしそもそものところ「メタバース」とは一体何なのか――? この記事では、メタバースの基礎知識や、ブロックチェーン技術及びNFTとどのように関連があるのかについても解説する。

【目次】
1.そもそもメタバースとは?
 1-1.メタバースとは「インターネット上の仮想空間の総称」
  1-2.「メタバース」がいま注目される理由
  1-2-1. 仮想空間を身近にし、充実させる技術の発展
  1-2-2.コロナ禍で増したデジタル世界の重要性
2.著名なメタバース
 2-1.海外発
  2-1-1.「Second Life」
  2-1-2.「フォートナイト」
  2-1-3.「Roblox」
 2-2.日本発
  2-2-1.「アメーバピグ」
  2-2-2.「あつまれ どうぶつの森」
3.NFTとは?
4.NFTはメタバースをどう変えるか

 4-1.キャラクター、武器やポーションなどのアイテムや、土地のNFT化
 4-2.無断複製や転載の防止
 4-3.複数メタバースにおけるNFTアイテムの横断利用
 4-4.NFT所有者にターゲティングしたメタバース内マーケティングの実施
5.メタバース×NFTの実例
 5-1.「Decentraland」
 5-2.「THE SANDBOX」
 5-3.「SecondLive」
6.メタバースやNFTが抱えるリスク
 6-1.賭博(ギャンブル)性
 6-2.納税の複雑化
 6-3.パスワード忘れ・暗号鍵の紛失
7.まとめ

1.そもそもメタバースとは?

1-1.メタバースとは「インターネット上の仮想空間の総称」

メタバースは、人々と交流・活動ができる、インターネット上の仮想空間を指す。もともとは、SF作家であるニール・スティーヴンスンの著作『スノウ・クラッシュ』(1992年)でインターネット上の仮想空間が「メタバース」と名付けられたことが由来だった。

ユーザーは「アバター」と呼ばれるアイコンを使用して自分を表現し、他のユーザーとコミュニケーションを取ったり仮想空間で買い物をして、現実とは別世界で生活を楽しむことができる。

1-2.「メタバース」がいま注目される理由

近年メタバースが注目されている理由は2つある。

1-2-1. 仮想空間を身近にし、充実させる技術の発展

  • 高機能デバイスやインターネット回線の普及

まず、PCやスマホといったデバイスの進化や、光回線や4G回線といった技術が普及し、誰もが高速インターネット通信に手軽に接続できるようになったことが挙げられる。このことによって、オンライン上の仮想空間が身近なものとなった。

「メタバース」は2000年代初頭から存在していた。例えば2003年にリリースされた「セカンドライフ」はまさしくメタバースの先駆けだが、当時はスマホも光回線もなく、常時もう一つの「仮想空間」に住むことができる人は限られていた。

一方で現在は、多くの人が数分のすきま時間に、スマホでオンラインゲームやSNSを利用している。メタバースが普及する土壌が整っているといえる。

  • VR技術の発達

VR技術の発達により、仮想空間上の体験がよりリアルになったことも挙げられる。Oculus Quest2などのVR端末を装着すれば、現実世界のような視覚・聴覚体験ができる。さらに現実世界の自分の身振り・手振りといった挙動や表情が、メタバース内の自分のそれと連動するため、よりリアルなコミュニケーションが取れる。こうした技術の進歩は、メタバースの世界そのものに圧倒的なリアリティをもたらしている。

  • ブロックチェーン技術の登場

ブロックチェーン技術の登場により、仮想通貨やNFTが生まれ、価値のあるデジタルアイテムをオンライン上で気軽に売買できるようになった。仮想通貨やNFTは、メタバース内の決済や売買に積極的に活用されている。

1-2-2.コロナ禍で増したデジタル世界の重要性

コロナウイルスの影響により、現実世界の移動やイベントが困難な状況が続いた。そうした中、オンライン帰省やリモートワーク、Zoom飲み会、オンラインイベントといった、デジタル上で完結するコミュニケーションの重要性が増している。

たとえば2020年4月には、ゲーム「フォートナイト」の中で人気ラッパーのTravis Scott(トラヴィス・スコット)氏を招待した音楽イベントが行われ、同時接続数1230万人を記録した。またゲームだけでなく企業のイベントがオンライン開催される機会も増えている。2021年4月には三井住友海上火災保険の入社式がバーチャルSNS「Cluster」を用いて行われ、約220名の新入社員がアバターを利用して、本社ビルを再現した空間で交流した。

これまでは「リアルがメインでデジタルは一部」だったが、コロナ禍でリアルとデジタルの融合が急速に進み、メタバースの重要性が増しているといえるだろう。

2.著名なメタバース

では次に、具体的にはどのようなメタバースがサービスとして提供されているのか見てみよう。

2-1.海外発

2-1-1.「Second Life」

2003年に米Linden Labが開発した3D仮想空間。遊ぶにはPCでアプリケーションをインストールする必要がある。月間アクティブユーザー数は現在、70万~90万人と見られる。ユーザーは建物やファッション、アバターやアイテムなどを制作・販売したり、他のユーザーと交流したりすることができる。

引用元:https://community.secondlife.com/blogs/entry/9093-second-life-pic-of-the-day-10072021/

2-1-2.「フォートナイト」

米Epic Gamesが2017年にリリースしたオンラインゲーム。PC、モバイル、Play StationやNintendo Switch、XBOXなど幅広いデバイスに対応している。登録アカウント数は5億超。ユーザーはバトルロイヤルやサンドボックスなどのゲームを楽しむことができる。

引用元:https://www.epicgames.com/fortnite/ja/home

2-1-3.「Roblox」

デイビット・バシュッキとエリック・カッセルによって2006年にリリースされたオンラインゲーム。PCとモバイルで遊ぶことが可能。月間アクティブユーザー数は2020年時点で1.5億人以上と見られる。オリジナルゲームを開発して他のユーザーに提供したり、他のユーザーが作ったゲームを遊ぶことができる。

copyright:ROBLOX CORPORATION

2-2.日本発

2-2-1.「アメーバピグ」

2009年にサイバーエージェント社がリリースした、アバターを活用したコミュニティ空間。PC、モバイル、スマートフォンブラウザで遊べる。2011年には1,000万人を超えるユーザーを獲得したが、2019年にスマートフォン版を除いてサービスを終了した。他のユーザーとチャットでコミュニケーションを取ったり、ペットを育てたり、ゲームして遊んだりすることができる。

引用元:https://pigg.ameba.jp/

2-2-2.「あつまれ どうぶつの森」

2020年に任天堂より発売された、Nitendo Switch用ゲーム。累計販売数は世界で3,118万本を超える。ユーザーは無人島を開拓したり、他のユーザーの島に遊びにいって交流したりできる。

引用元:https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/index.html

3.NFTとは?

デジタル世界で「1点もの」を表現できるNFT

NFT(非代替性トークン)とは、ブロックチェーン上で発行された、鑑定書・取引履歴証明のついたデジタルデータのこと。データの作者・所有者・作成時・取引日時などを、偽造・改ざんを防いで証明することができる。

これにより、「X月X日に世界的アイドルのXXからもらった1点もののサイン」のような、唯一無二の価値がある1点ものを、デジタルデータとして保有・表明できるようになった。

従来、デジタルデータはコピーや偽造が容易だったため、資産的な価値があるデジタルデータを作成したり、さらにそれをインターネットで取引することは困難だった。NFTを利用することで、資産価値のあるアートやトレーディングカード、ゲーム内アイテムなどをデジタルで作成し取引できることがメリットと言える。

4.NFTはメタバースをどう変えるか

メタバースにはすでに多くのNFTのユースケースが生まれている。実際の例を見ていこう。

4-1.キャラクター、武器やポーションなどのアイテムや、土地のNFT化

多くのブロックチェーンゲームでは、すでにゲームを進めるために必要なキャラクターや武器などのアイテムがNFTで発行されている。

たとえば、世界で最もユーザー数が多いブロックチェーンゲーム「Axie Infinity」は、ポケモンのようにバトルでキャラクターを育てていくゲームだが、そのキャラクターや武器はすべてNFTで発行されている。NFTで発行することで、アイテムそのものが価値を持ち、ユーザー同士の売買が活発に行われている。

OpenSea上で取引されるNFTアイテム

自分自身を表現するアバターやアイコンもNFTにすることができる。NFTでは、レア度や発行枚数といった鑑定情報を証明できるため、「世界に10000枚しかないある作品シリーズのNFTをアバターにしている人限定」のようなコミュニティが生まれたり、「1点ものの作品を持っている」ことを示して自分のアイデンティティを表現するといったことがすでに活発に行われている。

このように、NFTはユーザー同士の取引を誘引する効果があるため、時間をかけて遊び、手に入れたアイテムを売って稼ぐ「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」のゲームが人気を博している。

従来、ゲーム内アイテムや通貨を現金で取引することは「RMT(リアルマネートレード)」と呼ばれ禁止されてきた。しかし、NFTを利用したメタバースにはRMTを前提としたものが生まれつつあるのが実情だ。

4-2.無断複製や転載の防止

アバターやアイテムをNFTにして認証を行うことで、他人のアイコンのコピーやなりすましの発生を防ぐ効果がある。

MMORPGなどでは、悪質なユーザーによる、運営へのなりすまし詐欺事件などが発生していたが、そうした詐欺の少ない、安心して遊べる空間づくりにNFTが貢献していくかもしれない。

4-3.複数メタバースにおけるNFTアイテムの横断利用

これまでは、ゲーム内のキャラクターやアイテムはあくまでそのゲームの中でのみ価値を持ち、それ以外の用途はないというのが普通だった。一方、NFTの情報はブロックチェーン上で誰でも閲覧できるため、ひとつのNFTに複数のサービスを紐づけることが可能だ。

たとえば、9月に発行され話題となった「Loot」というプロジェクトでは、武器アイテムの特徴やパラメータが書かれたテキストのみがNFTとして配布され、ユーザーが自分たちでLootのユースケースをいくつも立ち上げていった。結果として、テキストからアニメーションを作ったり、土地を生成して取引したユーザーも存在する。

ブロックチェーン上に記録が残るという特徴により、もし1つのゲームがサービスを終了してしまっても、そのゲームで得たNFTアイテムを他で活用できる可能性も出てくる。

4-4.NFT所有者にターゲティングしたメタバース内マーケティングの実施

NFTは所有の証明や確認が非常に簡単だ。そのため”あるNFTの所有者限定”で特典やサービスを付与するマーケティングに活用できる。例えば、「特定のNFTを持っている人にのみ入れるメタバース上の空間を作る」「ある時期までに特定のNFTを購入した人にのみ特典のアイテムを付与する」といった手法などが考えられる。

たとえば、2021年4月には仮想空間サービス「Conata」上で、NFT所有者だけが劇場内に入場でき、特典映像「東北ずん子ワールド」を視聴できるといった実証実験が行われた。

今後、ライブや音楽イベントのチケットをNFT化してメタバース内の空間で開催するといったことも増えていくだろう。

5.メタバース×NFTの実例

5-1.「Decentraland」

Metaverse Ventures社が提供する、2015年に創られた最古参NFTゲームのひとつ。イーサリアムブロックチェーンをベースに開発されている。独自トークン「MANA」を使って、NFT化されたメタバース内の土地「LAND」を売買したり、持っている土地を自由に開発し収益化することができる。累計ユーザー数は1,000万人を超えると見られる。

copyright:https://decentraland.org/

5-2.「THE SANDBOX」

The Sandbox社が提供する、NFTを利用した仮想空間。ユーザーはゲーム内で使えるキャラクターやアイテム、ゲームをボクセル(正方形の組み合わせ)で自作しNFTとして販売できる。累計ダウンロードは4,000万超。

copyright:https://www.sandbox.game/jp/

5-3.「SecondLive」

copyright:https://secondlive.world/

Secondlive社が提供する、バイナンス・スマートチェーンベースの3D仮想空間。ユーザーは、ビジネスや学習、イベントの開催などを行うことができる。仮想オフィスの構築もサポートしており、ビジネスでの利用にも力を入れている。月間アクティブユーザー数は現在1,000人程度と見られる。

6.メタバースやNFTが抱えるリスク

新たな世界には、また新たなリスクもつきもの。メタバースやNFTが抱えるリスクについても紹介しておこう。

6-1.パスワード忘れ・暗号鍵の紛失

ブロックチェーン技術を使って開発されているメタバースやNFTゲーム、およびその決済に使うための暗号資産取引所の中には、運営側がユーザーIDやパスワードの情報を保持していないものも多い。情報をプラットフォームが集約するのではなく、ユーザー自らが保持し管理するべきだ、というのがブロックチェーンやWeb3.0の根本的な考え方だからだ。

パスワードを忘れたら再発行リンクをメールで送ってもらえばよい――。そのように、既存のサービスと同様に考えていると、永久に自分の資産にアクセスできなくなるリスクがある。くれぐれも注意したい。現に米ニューヨークタイムズが21年1月に、パスワードを忘れたばかりに、日本円にして225億円を超えるビットコインにアクセスできなくなった男性を取材し、大きな反響を呼んでいる。

6-2. 賭博(ギャンブル)性

アイテムが高値で取引されたり、プレイするほど仮想通貨をもらえる「Play-to-Earn」型のNFTゲームは、実質的に賭博(ギャンブル)ではないかと懸念する声も強い。

例えば21年10月には、米Valve社が運営する大手ゲーム配信プラットフォームのSteamが「暗号資産やNFTを発行・取引できるゲーム」に関してSteam上で公開すべきでない」として、実際にいくつかのNFTゲームを削除。この動きは、ワシントン州ベルビューに本社を置く同社が「NFTゲームの配信によって、ワシントン州のギャンブル関連法に抵触することを恐れたのではないか」とする見方も多い。

ちなみに同州では18年に、「Big Fish Casino」というオンラインカジノゲームが「現実世界で(経済的に)価値のあるものを賭けている」として訴えられ、合衆国控訴裁判所が「ワシントン州法に照らすと、違法なオンラインギャンブルである」と判断。運営元は巨額の和解金を支払うことになった。

6-3.納税の複雑化

NFTの売買で利益が出た場合の納税にも注意が必要だ。日本の場合、暗号資産の売買で生じた所得は雑所得として扱う。しかし、NFTアイテムの売買によって生じた利益について、国税庁は21年10月時点で明確な見解を出していない。今後も動向を注視していく必要があるだろう。

ちなみに、暗号資産に関しては、納税額の計算方式が複雑なために予期せず”脱税”してしまい、巨額の追徴金を課されて支払うことができない、というケースがすでに発生している。

7.まとめ

NFTとメタバースは非常に相性がよく、両者が組み合わさることで仮想空間に新しい体験をもたらし、よりその世界を多様に豊かにしていく可能性を持つ。

例に挙げたNFTメタバースで実際に遊んでみると、その世界を実感できるはずだ。ただし、アカウントや用いる暗号資産は自己管理が基本のため、自分が忘れると誰もリカバリーできないし、暗号鍵そのものを失くしてしまうといったリスクもある。アカウントの管理はこれまで以上にしっかりと行う必要があるだろう。

また、メタバースやそれに関する取引において、自身が何らかの法律に抵触してしまうことがないように、常に最新情報の入手に努めたほうがよいだろう。