​​日本のNFT動向、持続可能へ目立つ「フィジカル」への尽力

2023/03/29
​​<撮影/古田島大介>​ 

​​​​NFTクリエーターやコレクター、事業者は日夜、Twitterの音声サービス「スペース」やチャットアプリのDiscordなどで盛んに情報交換をしている。コミュニケーションはオンラインだけでも完結できるが、リアルで関係性を作り交流を深める動きも、活発に行われている。​ 

日本のNFTトレンドを考察するには、そうした「フィジカル」の重要性を見逃すことはできない。​ ​「NFT元年」と呼ばれた2021年から2年の月日が過ぎ、多くのNFTプロジェクトやNFTクリエーターが誕生した一方で、持続可能なビジネスとして継続していくために「コミュニティーの形成」へ、より一層注力されるようになったからだろう。​ 

国内NFTカルチャーにとって外せないフィジカルイベントの動向や、ホットになりそうなNFTトレンドについて、改めて考えてみたい。​ 

​​
NFTとクラブカルチャーは親和性が高い​ 

​​<撮影/古田島大介>​ 

​​筆者は2022年7月よりWeb3業界に興味を持ち、取材活動を始めた。​最初の接点になったのは、東京・渋谷のライブハウス「WOMB」で行われた日本発のWeb3音楽コミュニティー「VVAVE3」のイベントだった。​ まだWeb3に関しての知識がなかった筆者にとって、渋谷の有名クラブでの開催は、とても入りやすく感じたのが印象的だった。​ 

​​<撮影/古田島大介>​ 

​​ラウンジスペースではNFTアートが展示され、メインフロアでは音楽アーティストによるライブやDJパフォーマンスが行われた。​ ​​なかでも盛り上がったのが、日本のクラブミュージック業界の重鎮である大沢伸一氏(DJ/プロデューサー)のプレーだった。​ 

​​大沢氏は自身もNFTに興味を持ち、新しい音楽家としてのあり方を追求している。​ 一線で活躍してきたDJがNFTのフィジカルイベントを盛り上げていることに、非常に感銘を受けたのを今でも覚えている。​ 

​​
日本随一のパーティークリエーターもNFTに熱視線​ 

日本随一のパーティークリエーター、​アフロマンス氏も、NFTに熱視線を送っている。これまで数多くのフィジカルイベントを成功させてきた、イベントプランニングの第一人者だ。​ 

​​同氏は12年、地中海のイビサ島の名物で踊りながら泡まみれになる「泡パーティー」を日本に初めて持ち込み、その後の泡パ人気を築いた。​また ウオーターフェスの「Slide the City JAPAN」やキャンプイベントの「Burning Japan」、人気DJが全国へ“出張”する「VANLIFE DJ TOUR」など数々のイベントの企画、プロデュースを行っている。​ 

そんなアフロマンス氏は、日本発の注目のNFTブランド「BŌSŌ TOKYO-暴走東京-」のクリエーティブディレクターとして、同ブランドの世界観である「暴走族×サイバーSF」を体現したクラブイベントを展開。22年10月には渋谷スクランブル交差点をARでジャックしたプロモーションも行い、話題を集めた。

BŌSŌ TOKYOの展望としてアフロマンス氏は「リアルなイベントをもっとやっていきたい。XRの体験とかけ合わせた新しい音楽イベントにトライできたらいいなと思っています」と明かしている。NFTにクラブカルチャーを取り込んだプロジェクトとして、一歩先を行く存在といえそうだ。

 【関連記事】
「暴走東京」渋谷スクランブル交差点をハック XR×NFTの仕掛け人に聞く
「日本のカルチャー生かしたデザインを」 BŌSŌ TOKYOデザイナーの天神英貴氏らに聞く

​​
NFTをテーマにしたカンファレンスやイベントも定期的に開催​ 

NFTをテーマにしたカンファレンスやイベントは、国内でも定期的に開催されている。注目したイベントについて取り上げる。​ 

NFT ART TOKYO 

​​NFTクリエーターとコレクターが集うイベント「NFT ART TOKYO」は、日本最大級のNFTイベントと評されている。​ 22年6月に第1回が東京・渋谷で開催された際は、2000人以上が来場。​ 参加者の中には、NFTプロジェクト「Murakami.Flowers」を手がける現代美術家の村上隆氏の姿も見られた。​ 

​​あまりの盛り上がりに会場外まで人があふれかえり、警察が監視にやってくるほどの事態にも発展。同年9月には第2回が開催され、人気グループ「EXILE」のパフォーマー、関口メンディー氏も顔を見せていた。​ 日本におけるNFTムーブメントの熱量の高さが感じられた。​ 

Non Fungible Tokyo 

​​18年に日本初のNFTカンファレンスとしてスタートし、毎年6月に開かれるイベント「Japan Blockchain Week」に合わせて開催される「Non Fungible Tokyo」は、NFTやWeb3関連では国内最大規模のカンファレンス。国内外から多くのスピーカーが出席し、Web3ビジネスの最新トピックや知見の共有、将来性について議論するセッションが繰り広げられている。​ 

​​今年の6~7月に東京で開催予定のJapan Blockchain Week 2023のオフィシャルイベントは6月22日のNon Fungible Tokyoのほか、同月12~13日の「Web3 Summit Tokyo」、同18日の「WEB3 BIZDEV SUMMIT -BLUE-」。そして同28~30日には京都で「IVS Crypto 2023 KYOTO」が行われることが発表されている。

WEB3 BIZDEV SUMMIT

​​<撮影/古田島大介>​ 

​​住友商事のオープンイノベーションラボ「MIRAI LAB PALETTE」の「NFT部」創設者、雨弓氏が主催するイベントで、Web3事業者とWeb3業界に興味あるビジネスパーソンの出会いのきっかけを作る場として開かれている。Web3について学び、現場で働く人に触れ、交流する機会が提供されていることから、さまざまな業種や業界からの参加者が目立つ。​ 

22年12月に行われた第2回では、プロジェクトとしてNFTに携わるプレーヤーと、事業としてWeb3に取り組む法人という2つの側面からWeb3の魅力について語るプレゼンが行われたことが​​特徴的だった。多様な関わり方が可能なWeb3業界のリアルに迫るイベントとして、非常に好評を得ていた。

次の開催は、前述のJapan Blockchain Week 2023内で予定されている。

HONEYCON 

​​<撮影/古田島大介>​ 

​​Web3コミュニティー「Web3girls」を主宰するインフルエンサー、たぬきち氏が22年10月に手がけたイベント。「より多くの人にWeb3に興味を持ってもらいたい」という思いのもと、Web3テーマパークをイメージした体験型カンファレンスとして、これまでにない遊び要素を織り交ぜていた。​ まるでお祭りに来たかのような、ガシャポンや射的、綿菓子、肉まんの販売など、楽しみながらWeb3の楽しさを味わえた。​ 

​​<撮影/古田島大介>​ 

​特筆すべきは、40以上の協賛があったこと。これはたぬきち氏の求心力のたまものだろう。土日の開催だったのにもかかわらず、ブースやセッション会場は終始多くの人で賑わっていた。​ 

TOKYO Web3 FES 

​​大手企業とNFTプロジェクトをマッチングさせる「Web300 COMMUNITY」が主催し、​ 22年12月に渋谷で開催。30以上のNFTプロジェクトやクリエーター企業が出展した。

​​VIPエリアでは、有識者らによるトークセッションが行われ、大手企業のWeb3担当者とNFT事業者との交流の場も設けられていた。​ 同時期は大手暗号資産取引所FTXトレーディングの経営破綻による影響がNFT業界へも及んでいたが、そうした不安要素を吹き飛ばすように2000人以上が来場する盛況ぶりだった。

​​Web3事業者、クリエーター、メディアが集うフィジカルスペース​ 

​​イベント以外にも、クリプトネーティブやWeb3事業者が集うフィジカルスペースがいくつも存在している。東京を中心に、その一部を紹介する。​ 

​​■Crypto Lounge GOX​ 

​​<撮影/古田島大介>​ 

​​NFTやGameFi、クリプトの動向などの情報交換ができる開かれた場として22年11月にオープン。​ 東京・新宿歌舞伎町の奥にあり、通称「新宿GOX」として親しまれ、Web3事業者内での認知度や信頼度は非常に高い。​ 

​​プロジェクトローンチやミートアップの会場として名前があがることも多く、常に何かのイベントが催されている。​ 平日の日中はコワーキングスペースとして無料開放されており、気軽に足を運びやすいのも​人気の理由だろう。​ 

CryptoBar P2P 

​​クリプトの文化と技術を愛する人のための「大人の隠れ家」をコンセプトにしたバー。​ 銀座の立地しながらも喧騒(けんそう)から離れた一角にあり、店内での決済は暗号資産のみと、徹底的に“クリプトファースト”を貫いている。​ 

​​ふらっと飲みに入れるだけでなくNFTの会員権も発行しており、定期的に通って交流したりお酒を飲んだりすることも可能。都内でWeb3関連のイベントが行われた際に2次会会場として使われることもしばしばある。​ 

​​最近ではNFTプロジェクトのオフ会や「1日店長」企画、クリプト合コンなど、多彩なイベントも行われている。​ 

CryptoBase@NIB SHIBUYA 

​​起業支援のガイアックスが運営する、Web3特化のシェアオフィス。​Web3起業家や投資家、DAO(分散型自律組織)プロジェクト、NFTアーティストなどが集う。​ 

​​夜には規模を問わずイベントが定期的に開催されている。勉強会やミートアップが開かれていることも多い。​ 


23年もWeb3は注目ワードに

​​日本においては23年も、Web3が注目のキーワードになると感じている。​ NTTドコモは22年11月、今後5~6年をかけてWeb3領域に6000億規模を投資すると発表したのに続き、3月にはKDDIがWeb3領域の新サービス「αU」を発表。​ 日本経済をけん引する大手企業のWeb3参入は、今後も続いていくのではと予想している。​ 

​​また、「City×NFT」や「ローカル×NFT」といった形で、NFTを活用して地方創生や地域活性化につなげる事例も増加している。​ 羽田空港に国内外のブロックチェーン企業が集結したイベント「HANEDA WEB3.0 EXPO」が行われたり、4月には豊島区の後援でJR山手線の大塚駅前にWeb3企業がブースを出展する「TOKYO OTSUKA NFT FES」の開催が予定されたりと、来街者への訴求やNFTの認知拡大を狙った企画も目立つ。​ 

​​そのほか、老舗メーカーとNFTプロジェクトのコラボレーションや有名アーティストによるNFT発行、NFTアイドルの育成、飲食店や旅行先でメリットを受けられるメンバーシップNFTの提供など、NFTのユースケースだけで考えれば、それこそ枚挙にいとまがない。そうした取り組みは、今後さらに増えていくだろう。​