Play to Earnの先にあるものは DEA山田氏が描くGameFiの未来図【Web3の顔】
ゲームを遊ぶことで収入を得られる「Play to Earn」の概念が、徐々に浸透しつつある。その先駆けであるブロックチェーンゲームのプラットフォーム「PlayMining(プレイマイニング)」を運営するDigital Entertainment Asset Pte. Ltd. (DEA)は2022年、新たなプロジェクト「PlayMining Verse」を開始した。
PlayMining Verseは、クリエーターとファンが一緒になって、メタバースでのコンテンツ制作を進めるもの。メインタイトル「JobTribes(ジョブトライブス)」をはじめとするGameFi(ゲーム+金融)の領域を超えた向こう側に、何を見ているのだろう。DEA創業者で共同経営者の山田耕三氏にインタビューした。
■ Web3の世界の「ディズニー」を目指す
——まず初めに、事業概要をご紹介いただけますか。
弊社が行っているのは、ゲームのプラットフォーム事業PlayMiningです。2020年5月から2年3カ月ほど、遊びながら、お金を稼げるPlay to EarnのNFTプラットフォームとして運営しています。Play to Earnのコンセプトを、実際にサービスとして行ったのは、世界初だというのを売りにしています。
——山田さんは以前、テレビ業界に身を置いていました。そこからWeb3の世界に転じた経緯をご説明いただけますか。
前職のテレビ東京は02年に入社して、17年末まで15年ほど、音楽やバラエティー番組の制作を行っていました。もともと、もの作りが好きで「エンターテインメントの正しいあり方とは」や「面白いコンテンツとは」と考えていましたが、どこか消費されて、残らない感じがしていました。
——日本国内でも最近、ブロックチェーンゲームやGameFiの話題を目にする機会が増えました。社会の関心の高まりを感じているでしょうか。
21年の初めから、世界でNFTという言葉が、爆発的に知られるようになりました。当初はアート中心でしたが、21年の夏に「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)」さんが大きくヒットして、世界のゲーム会社がびっくりして、参入を検討し始めた印象です。
共同経営者の吉田直人は、ずっと年上ですが、退職の数年前から「エンターテインメントやりたいおじさん」同士で意気投合して、「後世に残るようなアニメ、ゲーム作品を作りたいね」と話していました。その後、自由にやりたいと独立して、テレビ番組制作会社を立ち上げて、そこで生活基盤を作りつつ、退職の8カ月後にはDEA社をシンガポールに設立しました。
国内企業でも、スクウェア・エニックスさん、セガさん、バンダイナムコさん、サイバーエージェントさん、KLabさんと、続々と参入発表しています。ムーブメントが起きると、我々のプロダクトも信じてもらえるようになるので、非常に喜ぶべきことです。
——9月に行われた「東京ゲームショウ2022」では、PlayMiningの事業戦略が発表されました。ゲームタイトルの拡充に加えて、PlayMining Verseへの注力がポイントでしょうか。
いままで、どんどんゲームを出していく形できましたが、PlayMining Verseをベースに置きながら、JobTribesもひとつのコンテンツIP(知的財産)と位置づけます。いまゲームとして展開していますが、本質的にはマンガがあってもいいし、アニメがあってもいい。リアルのグッズ展開やライブイベントのように、360度コンテンツビジネスの「タネ」を、Web3的なアプローチで作れたらいいなと考えています。
エンターテインメント企業が「ディズニーを目指します」というと陳腐に聞こえますが、モデルとしては似ています。劇場公開映画が中軸にあって、ファンクラブがあり、グッズがあり、リアルワールドとしてのディズニーランドがある。それと同様に、我々の中軸には、GameFiコンテンツがあり、そこから派生することで、足腰の強いコンテンツ世界を作るというところへ一歩踏み出す。
GameFi以外の360度展開については、Web3だけにこだわらず、Web2的な展開も嫌がらずに柔軟にやっていきます。既存の漫画アプリと手を組むとか。我々の目的と手段はハッキリしていて、コンテンツ世界を作りたい。そのために役立つ部分には、ブロックチェーンを適宜利用する、という考えです。
■ 目指すのは「任天堂型」のビジネスモデル
——Play to Earnの可能性と課題について、お考えをお聞かせください。
ゲームのポテンシャルを最大限に発揮させるのがPlay to Earnの本質ですね。ゲームは体験価値を提供するだけでなく、社会課題の解決にも使えます。ゲームは、人間を動かしたり、物事を変えたりするのに、とても良い手段です。たとえば、ゲームによって寄付に似た行動を簡単に実現できる。
調べてみてビックリしたんですけど、寄付マーケットって、ゲーム市場よりも大きいんですよ。お金を払った人が「世界をちょっと良くした」という、カタルシスや快感が手に入る。ゲームで寄付できて、助かった人から「ありがとう」が返ってきたら……。貧困に限らず、スポーツクラブの経営がNFTで活性化するなど、自分が応援したい相手にアクションを起こして、世界を変えられる可能性を秘めています。
——日本で本格的にGameFiを展開しようとした場合、課題となるのが一般の人々の暗号資産に対する不安だと思うのですが、そのあたりはどうお考えですか。
事業を始めた18年当時から、ICO(新規暗号資産公開)の詐欺などが起きていたので、みなさんの不安は正しいです。だからこそ、私たちや大手ゲーム会社がしっかりしたものを作って、安心安全だよと伝えていかなければなりません。
刃物と一緒で、悪い人が使えば人を傷つけるけれど、良い使い方をすれば文明をスケールアップできる。今までにできなかったことができるようになる。そういう使い方ができるとわかってもらえれば、急激に普及していくだろうと確信しています。
——日本の場合、Web3の分野は税制と法律の面で問題があるといわれていますが……。
来年か再来年ごろには、1万円から10万円くらいのお金をゲームから稼ぐ人が、結構普通になると思います。だとすると、金額によっては税金をちゃんと申告する必要がある。もともと会社勤めで税金の処理をしてこなかった方には、相当大きなハードルなので、ライバル企業とも手を取って、わかりやすいといわれるようにしたいです。
NFTの登場とブレイクによって、事業としてブロックチェーンが生きる時代がやってきて、世界中の感度の高い人はWeb3で起業している。でも「いまやるぞ」となったら、まだ法律が変わっていないので、みんなシンガポールやドバイへ行っている状態です。
シンガポールでは「いま決まっているルールに反していなければOK」ですが、日本は正直なところ、新しいチャレンジがしにくい法体系ですね。ただ、そこは政治のほうも「法律を変えていかなければいけない」と動き出しています。
——DEAのビジネスモデルについてですが、お話を聞いていると、ゲーム開発よりも、プラットフォーム運営がメインという印象を受けます。
おこがましく聞こえるかもしれませんが、目指すのは任天堂モデルです。「ファミリーコンピュータ」や「Nintendo Switch」のようなプラットフォームを作って、初期は「スーパーマリオ」などの自社開発のゲームを出しながら、サードパーティーが入ってくる環境を整える。ただ「スプラトゥーン」のように圧倒的に面白いものは自分で作る。そういう状態が理想です。
年に数本、自社タイトルを作りつつ、参入企業がどんどん増えるイメージです。そこで夢だった、オリジナルIPや、オリジナルゲームを作るフェーズがやってきます。
——これからのGameFi業界は、どのような展開が予想されますか。また、そのなかでDEAは、どのような立ち位置を目指しているでしょうか。
自分たちが別の体験価値を提供できると、ゲーム会社の多くはまだ気付いていません。でも振り返ると、たしかにコンシューマーゲームからソーシャルゲームになったときに、体験価値が変わっていたなと。人と比べる、人に自慢する、人と協力するといった体験価値が加わった。この上に、またひとつ(GameFiならではの体験価値)が乗っかってくる。ここからは人類の未体験ゾーンです。
ゲームのオーナーさんたちが、実際に現実社会を救う。誰かに「ありがとう」と言われて「エモい」気持ちになる。世界をよくしたのだという手応えは他で得られないので、クセになる。寄付もエンターテインメイトだとすると、払った側にカタルシスや体験の報酬がある。そこをアップデートすれば、「ヒーロー欲求」にアクセスすることになります。
「現実世界にどう変化をおよぼすか?」という観点が抜け落ちたメタバースの議論は、本当に空虚だなと思っています。「3DのCGがどれだけ高精細で、デジタル空間でのエンターテイメント性がどれだけ高いか?」という話は既存のゲームの延長線上でしかない。
それよりも意義深いメタバースの役割とは「デジタル空間で遊ぶと、現実世界の自分も救われる。」ということ。デジタル空間での役割分担が、もはや仕事となって給料を得られるとなると、もう現実の仕事は不要になってきます。PlayMining Verseで自分の好きなことをやって、それが給料として十分だったら「生きがい欲求」を満たせて、ずっとデジタル空間で過ごすことができる。
きっちり進化したGameFiが「メタバース」になっていく。自分の人生や可処分時間を、どれくらいそこで費やして、意味ある目的や行動をとっているか。それこそがメタバースの定義ではないでしょうか。
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