女性が男性を食べるSF小説はなぜ「NFT」になったのか? 作家・小野美由紀さんに聞く

女性が妊娠するためには、セックスした後に男性を食べないといけない。もしもそんな世界になったらーー。奇抜な設定の短編SF小説『ピュア』を発表して反響を呼んだ作家・小野美由紀さん。彼女が新たに仕掛けたのが「小説のNFT化」だ。
自身の話題作『ピュア』のデジタルデータにNFT(非代替性トークン)を付与。デジタル小説でありながら「一点もの」にしたうえで、海外発のNFTマーケットプレイス「OpenSea」に出品した。
しかも、ただ単に日本語の小説をNFT化するだけでなく、2人の翻訳家による「2種類の英訳版」も同時にNFTとしてリリースした。
なぜ、こんなプロジェクトを企画したのだろうか。小野さんに真意を聞いた。
■NFTは「文豪の手書き原稿」と同じようなもの
ーーNFTに興味を持ったきっかけはなんでしょう?
小野:NFTのスニーカーが発売されて高額で落札されたのを見て、すごいなと思ったんですね。それまではブロックチェーン(NFTの基盤となる技術)については聞きかじる程度でしたが、直感的に「これは面白そうだ」と思って、勉強を始めました。
ーーどのあたりに魅力を感じたのでしょうか。
小野:これまで作家が作品を発表するためには、出版社に認められないといけなくて、出版社から出るものがすべてという性格が強かったんですよね。ネットで発表することはできるけれど、お金にするのは難しく、権威性のある出版社に認められないと作家は食べていけないという現実がありました。そこへ、NFTという新しい技術が出てきた。私は、NFTって、昔の文豪が手書きで書いた原稿のようなものじゃないかと思ったんですね。あれも、世界に一つじゃないですか。
ーー世界に一つということが証明されれば、作品に価値が生まれてくる、と。
小野:作品の内容だけでなく、作家がそれを書いたということ自体に価値を見出している点に魅力を感じました。作家が作家活動をすること自体に価値を持たせられるようにしたのがNFTではないか、と考えています。
ーー今回は、書籍化されている日本語の小説だけでなく、未発表の英訳版も同時にNFTとしてリリースしましたね。
小野:英訳版は世界でまだ誰も見たことがない作品で、1冊だけの電子の同人誌をネットで出したというイメージです。私としては、日本語版よりも、翻訳者さんが翻訳してくれた英訳版のほうが売れてほしい。そのほうがプロジェクトの意味も出るので。
ーー翻訳版への思いは、noteで公表したステートメントでも強調されていましたが、文芸作品の翻訳者の報酬が異常に安いケースもある、という点にはビックリしました。
小野:安いですよね。実際には翻訳した作品が文芸誌に載っただけではお金をもらえないケースもあるようで、5万円もらえたら良いほうだ、ということもあるそうです。
ーーそんな厳しい条件の中で、どういう人が日本文学を翻訳しているんでしょうか?
小野:日本の文化や文学が大好きな外国語話者が多いようです。大学で日本文学を専攻して、文芸翻訳を仕事にしたいけど、それだけだと食べられないので、大学で職につくなどして片手間で文芸翻訳に当たる方が多いようです。

■翻訳者の支援が「日本文学の世界進出」につながる
ーー日本語の小説は翻訳されることで、海外で読まれる可能性が広がります。そこに大きな価値があると思うんですが。
小野:そこが評価されてほしいです。でも、翻訳者さんは出版社に依存していて、立場が弱い。ある本を翻訳したいと思って、作家と日本の出版社の許可を取ったとしても、海外の出版社がダメと言ったら発表できない。
ーー一方で、いま日本文学は海外で注目を集めているそうですね。
小野:柳美里さんが全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞したり、松田青子さんの短編集(英訳版)が世界幻想文学大賞に選ばれたりしています。世界中で日本の女性作家を発掘しようという動きがあるんだけど、いかんせん翻訳者がそれだけで食べていける収益構造が整備されていない。食えないからやらないよね、と。日本文学は翻訳の問題がネックになって、なかなか世界に出ていけない。それはすごくもったいないと思います。
ーーそんな中、今回は2人の翻訳者による「2種類の英訳版」をNFTとして出していますが、翻訳者はどういう人なのでしょう?
小野:どちらもアメリカのプロの翻訳者さんです。ローレルさんは女性で、カラウさんは男性です。
ーー小野さんと2人はどこで接点があったのでしょうか?
小野:向こうから連絡があって「翻訳したい」と言ってくれました。ローレルさんは、ワシントン大学セントルイス校の日本文学好きのブッククラブのメンバーです。去年開かれた、ワシントン大学やハーバード大学などの学生らを対象にした『ピュア』のオンライン読書会で、私が講演したときに参加していたんです。
ーー作品は「OpenSea」に出品してオークションにかけられています。最低落札価格は3ETH(約160万円)に設定されていますが、どのように決めたのでしょう?
小野:プロジェクトを企画しているときに相談した投資家が「3ETHだったら買うよ」と言ったので、「じゃあ、3ETHでとりあえず出してみよう」と。ただ、相談したのは、まだETHが30万円台のときでした。その後どんどん上がってしまって、今は50万円以上。ちょっと強気に出すぎたかなという気もするんですけど(笑)そのあたりはトライアンドエラーで、まあ市況を見つつやっていこうと思います。
ーー今後の展開については、どう考えていますか。
小野:国内では話題にしてもらっていて、応援してくださる方にも恵まれました。今後は、海外のコレクターにどうアプローチしていくかが課題ですね。今後は全言語での翻訳権の付与されたNFTや、二次創作権、メディアミックス権などの付与されたNFTを発行するなど、さまざまな文芸とNFTの可能性を探っていきたいと考えています。韓国の「イカゲーム」が初めから世界を狙って大ヒットしたように、日本の文芸やエンタメも世界に刺さるコンテンツが多数あるはずなので、このプロジェクトも、その接点を作る試みの一つというように捉えてもらえたら嬉しいです。
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