メタバース・プラットフォームの有力候補「Core」 いま注目される3つの要素
ブロックチェーン技術を活用したゲームは、メタバース動向を知る上で欠かすことができない存在だ。それらの開発の鍵となるのが「ゲームエンジン」だ。近年では、米Unity Technologiesが開発したゲーム制作エンジン「Unity」や、米Epic Games「Unreal Engine」などを活用して、多くの人気ブロックチェーンゲームが生まれている。
本記事では、そんなゲームエンジンを用いて開発された注目のメタバースプラットフォーム「Core」について紹介する。
■著名ゲームタイトルにも使われるゲームエンジン
まずゲームエンジンとは、ゲームを簡単に開発するための支援ツールを指す。近年では商用ゲームエンジンの普及が進んでおり、著名なゲームタイトルの開発にも多用されている。
例えばUnityは、2019年にリリースされた「マリオ・カート・ツアー」や2020年の大ヒットゲーム「Fall Guys」、2021年に人気急騰した「Among Us」などのゲームエンジンとして活用されている。Unreal Engineは、全世界で5億超のアカウント数を誇る「フォートナイト」のほか、「ファイナルファンタジーVII リメイク」や「ドラゴンクエストXI」など多くのヒット作の礎となっている。
UnityとUnreal Engineは、ともに一定の売上に到達しない限り無料で利用できる。そのため、大手ゲーム開発会社だけでなく、個人クリエイターや少数チームのユーザーも多い。また、これらのゲームエンジンは多数のプレイヤーがオンラインで同時にプレイすることを可能にする機能を備えていることから、これらを活用したメタバース構築の取り組みが増えている。
こうした文脈で注目を集めているメタバースゲームが、米シリコンバレーを拠点とする「Manticore Games」が制作した「Core」だ。
■シームレスな”マルチバース”を提供するCore
Coreは、前出のゲームエンジンUnreal Engineをベースに開発されたメタバースゲームプラットフォームだ。
Coreが”有力メタバースプラットフォーム”として注目される特徴は3つある。
まず1点目として、複数のユーザーが同時にゲームをプレイできることはもちろん、自身でゲームを開発できることが挙げられる。同プラットフォームで用意されたゲームテンプレートを活用し、自由に、かつ簡易にゲームを開発できるのだ。また、もちろんプレイヤーとしても、Coreプラットフォーム内で提供されている様々なゲームやイベントを楽しむことができる。
さらに2点目、かつCoreが最も評価されている点とも言えるのは、ゲームやイベント間をスムーズに移動できるそのシームレス性だ。数ステップで様々なメタバースゲームやイベント間を移動することができる。
オンラインゲームやブロックチェーンゲームを問わず、通常、異なるゲーム間を移動する場合は1つのゲームを終了し、別のゲームを立ち上げる必要がある。しかしCoreではそのようなステップを排除し、同時に複数のゲームを立ちあげ瞬時に移動してプレイすることができるのだ。TechCrunchのTaylor Hatmaker氏は、Coreの体験を「この10年で体験したオンラインマルチプレーヤー体験の中でも、特にシームレスなものだった」と評価している。
CoreのHP上ではこうした特色を「YOUR PORTAL TO THE MULIVERSE(マルチバースポータル)」と表現している。複数のメタバースをシームレスに行き来できる点を”マルチバース”と表現していると思われる。
■次世代エンタメ空間として大きな可能性
次に3点目として、Coreはゲームと音楽の融合など次世代エンタメを切り開く可能性を持ち合わせており、この点にも注目が集まっている。
現在進行中の取り組みの1つが、欧米で人気の音楽プロデューサー「deadmau5(デッドマウス)」がCoreプラットフォーム上につくりだした仮想空間「Oberhasli」だ。
Oberhasliは基本的にdeadmau5のアバターによるライブコンサートを楽しめる仮想音楽空間だが、ゲームの要素が加わっているという点で、これまでにないものとなっている。
現時点で確認できるのは「HOP ‘TIL YOU DROP」「MAU5 HAU5」「Baloon Royal」の3つのゲーム。
HOP ‘TIL YOU DROPは、ステージでできるだけ速く・多くジャンプするというシンプルなゲーム。ステージから落ちると負け。10月14〜21日の1週間、このゲーム上で参加者を巻き込んだチャレンジイベントが開催され、リーダーボードのトップ20のプレイヤーにキャップやピンなどのグッズが贈呈された。
音楽ファンが集うバーチャル空間をつくり、音楽だけでなく、ゲームも楽しめるという新しい試み。Coreが提供するゲーム/イベント開発を容易にするテンプレートの存在によって、実現できるものだ。deadmau5のほかにも参入してくるミュージシャンは増えてくるものと予想される。
■メタバース構築におけるクリエイターエコノミーの重要性
Coreはクリエイターエコノミーを醸成しようという機運も持ち合わせている。それは今後、長期的なメタバース構築に寄与していくと考えられる。
メタバースとは、様々な世界が同時並行に存在する仮想共有空間だ。次々と、新しいプラットフォームが生まれている。そのため、プレイヤーとしても、開発者としても、ユーザーをメタバースに惹きつけておくには、飽きさせないほどのコンテンツが必要になる。ということはそれだけ多くの開発者を自社プラットフォームに集め、より価値あるコンテンツを開発してもらう必要が出てくる。
この点、Coreのクリエイターに対する報酬制度は、クリエイターを魅了し、Core上で多くのコンテンツが絶え間なく生まれる循環をつくりだせる可能性を持っている。
Coreプラットフォームでゲームやイベントを作り、パブリッシュしたクリエイターが受け取る報酬レートは実に50%。他のプラットフォームと比べると破格の高さだ。他の例を挙げると、海外でマインクラフトと並び人気の高いゲーム「Roblox」でも、クリエイターが独自にコンテンツを制作し、収入を得られる仕組みが存在する。しかしその報酬率は24.5%。75.5%は、Robloxの取り分となる。
ちなみに、世界に20億人以上のユーザーを持つYouTubeはクリエイターエコノミーの醸成に注力していることでも知られるが、クリエイターへの広告収入分配率は55%。Coreの配分率はこれに準ずるものであり、”クリエイターファースト”の理念を踏襲したものと思われる。
Robloxでゲームをつくり収益を得ていたゲーム開発者、BenEast氏がCoreでゲームを公開したところ、プレイセッションが30%少ないものの、収益が9倍になったという事例などもCoreでは紹介されている。こうした事例に触発されたクリエイターが他のプラットフォームからCoreにシフトするのは時間の問題と思われる。
米テックメディア「The Verge」では、Coreが「ゲーム開発のYouTube」になると報じているが、クリエイターエコノミー創出しようという姿勢を鑑みると、その可能性は十分にあるといえるだろう。
■すでに18億円を調達済み
Crunchbaseのデータによると、Manticore Gamesはこれまで7回の資金調達を実施、Epic Gamesやソフトバンクなどから計1億6000万ドル(約18億円)を調達している。
直近のニュースでは、Manticore Gamesは2021年10月15日、ゲームと音楽のメタバースに関するトークセッションを開催。前出のdeadmous5こと、ジョエル・ジマーマン氏などの著名ミュージシャンやクリエイターらが参加し、ゲームと音楽という視点からメタバースの未来について議論した。
またCoreでは最近、その仕組みを活用して、ゲーム開発の学習コースを提供するユーザーが現れるなど、教育分野での活用可能性も見えてきている。
現在CoreはWindows PCのみで利用可能だが、来年にはiOSを含め他のプラットフォームでの利用も可能になるとのこと。現在、言語は英語のみだが、日本語のローカライズが実施されれば、日本でも広がる可能性はより大きくなるだろう。
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