ユーザー4768%増も NFTゲームの現状と可能性

2021/10/20
出典:Axie Infinity

国内外のテックメディアでは今「メタバース」や「NFT」という言葉がバズワードになっている。メディア露出が増え、話題が話題を呼ぶ状態となり、関連分野におけるユーザー、サービス、投資資金は急速に増加・拡大中だ。

そんなメタバース×NFTの実例としてユーザーを集めているのが「NFTゲーム」だ。その現状と今後の可能性について解説する。

■NFTゲームがメタバースのトレンドに

メタバースは「仮想共有空間」とも訳せる概念。高速ネットワーク、VR・AR技術、ブロックチェーン技術の進歩によって可能となった仮想世界のことだ。

これまでのVRやARとの相違点は、仮想世界に参加する人びとが同じ空間・状態を共有するところにある。仮想世界で起こる事象やそこにあるモノが唯一無二のユニーク性を有している状態ともいえる。

映画『レディ・プレイヤー・ワン』で描かれている仮想世界がメタバースのイメージだ。主人公やその仲間たちがそれぞれVRヘッドセットを被り、仮想空間「オアシス」に入るが、空間・体験はすべて共有される。

この仮想空間におけるユニーク性を担保する技術の1つがNFTであり、メタバースとNFTがよく一緒に語られる所以だ。

これまでのところメディアでは「NFT」のみの話題が先行していた印象だが、この数カ月「NFT」と「メタバース」との結びつきを連想させるトレンドが強く表れている。

そのトレンドとは「NFTゲーム」の台頭だ。ブロックチェーンを活用し、ゲーム内で獲得するアイテムや通貨をNFT化し、現実世界の暗号通貨取引所でビットコインやイーサリアム、またはフィアットに交換できる仕組みを持つゲームのことを指す。

このNFTゲームは、メタバース実現に向けて不可欠な要素を有しており、今後メタバースへの注目度の高まりとともに、NFTゲーム関連企業への投資が増えていくものと見込まれる。

NFTゲームがメタバースにとって重要となる理由は、上記でも触れた『レディ・プレイヤー・ワン』の世界をイメージすると見えてくる。

映画内のプレイヤーは、仮想空間で稼ぐバーチャルコインを現実世界でモノを購入するために利用できる。「NFTゲーム」は、これと同様のことを可能にする仕組みなのだ。

モンスター育成NFTゲーム、ユーザーは4768%増

NFTゲームの盛り上がりをDappRadarの最新データで見ていきたい。

DappRadarによると、2021年9月、ブロックチェーンベースの分散型アプリケーション(dapp)につながったユニーク・アクティブ・ウォレット数は、デイリー平均で171万件に上った。これにより、7〜9月期の平均は154万件と前期比で25%増、前年同期比では487%増という伸びとなった。

注目すべきは、アプリ種類別のウォレット利用動向だ。メディアでよく話題となるデジタルアートの取り引きを中心とした「NFT」のウォレット利用数は、2021年7〜9月にかけて1日平均10万件未満で推移しているのに対し、ゲームのウォレット利用が急増しているのだ。7月時点ですでに40万件に達していたが、8月に80万件、9月に100万件以上に拡大した。

その中でも、ベトナムのゲーム開発企業Sky Mavisが開発・運営する「Axie Infinity」は代表的なNFTゲームの1つだ。

出典:Axie Infinity

「Axie」という呼ばれる生物を育成し、タスクやバトルを通じて「Smooth Love Portion(SLP)」というアイテムの取得を目指す。このSLPを使うことでより強いAxieの育成が可能となる。

一般的なゲームと大きく異なるのが、このSLPを暗号通貨として取り引きすると、現実世界の通貨(フィアット)に交換できる点だ。トッププレーヤーは、米ドル建てで1日250ドル相当のSLPを稼ぐともいわれている。

DappRadarによると、7〜9月期Axie Infinityのアクティブユーザー数は150万人以上となり、売上高は7億7600万ドル(約884億円)となった。

また、Blocksworksが10月1日に伝えた最新データによると、Axie Infinityの1日あたりのアクティブユーザー数は185万人と4月比で4768%増加したという。

Sky Mavisはこのほど、シリーズBラウンドで1億5200万ドル(約172億円)を調達しており、言語のローカライズなどにより、ユーザーベースはさらに拡大することが見込まれる

■Axie Infinityに続く注目NFTゲーム

Axie Infinityに続くNFTゲームとして注目されるのが、カードトレーディングゲーム「Splinterlands」だ。

出典:Splinterlands

2021年1〜7月までの月間アクティブウォレット数は、1万件前後で推移していたが、8月に7万件以上、9月に23万8000件に到達。7〜9月期のウォレット数は、前期比で1376%増という驚異的な伸びを記録した

このほかどのようなNFTゲームが人気なのか、DappRadarのランキングで確認することができる。10月13日時点のデータを参照してみたい。

この時点の過去24時間のユーザー数で見たNFTゲームランキングは、Splinterlandsが35万人でトップ。2位は「Alien Worlds」(32万人)、3位「Farmers World」(4万7000人)、4位「Upland」(3万3000人)、5位「CryptoMines」(2万6000人)などと続く。

この数カ月、NFTゲームアプリの新規ローンチ数が急増しており、それに伴いNFTゲームユーザーも増加している。NFTゲームの普及によって、現実世界とメタバースの垣根はなくなり、最終的には「レディ・プレイヤー・ワン」のような世界が登場すると考えられる。

実際、フィリピンではコロナ禍で失業した人びとがNFTゲームで収入を得るようになったとの報告もある

NFTゲームが経済社会をどのように変えていくのか、今後の動向に注目したい。