「言葉×NFT」テキストで遊ぶ作家が創り出すコンセプチュアルな「NFTアート」Kalen Iwamotoさん【NFT.NYC】

「The NFT.NYC Diversity of Art Showcase」で展示されるKalenさんの作品(提供:Kalen Iwamotoさん)

Kalen Iwamotoさんは、フランスを拠点に、テキストをベースにした創作をする作家・アーティスト。両親は共に日本人だが、Kalenさんが生まれる前に二人はカナダ永住者となり、Kalenさんは日系カナダ人2世として育った。そのコンセプチュアルな作品は、言語や文学をベースとしながら、ブロックチェーンの技術や精神を取り入れたものになっている。6月20日からニューヨークで開催されるイベント「NFT.NYC 2022」の出展アーティストに選ばれたKalenさんに、NFTと創作活動の関係を聞いた。

■「新しい」ブロックチェーン技術が「いつ主流になるのか?」

――「The NFT.NYC Diversity of Art Showcase」選出の反響や、展示に向けて制作している作品について聞かせてください。

私の作品がNFT.NYCで紹介されることを知った知人は感激してくれましたし、私自身もとても興奮しました。私のように言葉や文章を扱うクリエイターたちは、テキストベースの作品が選ばれたことを喜んでくれたのではないでしょうか。

NFT.NYCのアートショーケースのテーマは「多様性」です。私はこのテーマに自分の考えを反映させ、展示場所であるタイムズスクエアの大きなスクリーンでもはっきりとわかるものを作りました。また、CryptoとNFTの世界へのオマージュに加え、ニューヨークへの言及もしたかったのです。

私は「多様性」という言葉の語源を掘り下げました。英語では「diversity」ですが、これはラテン語の「diversus」が語源となっており、意味は「異なる方向を向く、回転する」です。

そこで、「WEN NEW」という、異なる方向を向いているように読める2つの言葉を中心にした作品を作りました。Cryptoの世界では言葉の綴りを変えることが多く、「when」の代わりに「wen」をよく使います。「WEN NEW」は、私たちの新しさへの渇望に言及すると同時に、「新しい」ブロックチェーン技術が「いつ主流になるのか?」という疑問を投げかけているのです。

さらに、同音異義語やテキストのバリエーションである「WEN YOU」と「WE KNEW」でこのフレーズを挟みました。これはNFTや暗号資産の分野に強い人々、アーティスト、作家、クリエイター、ビルダーに対する暗号化されたメッセージであり、詩のようなものです。さらに、この作品を見ると「NEW YORK」という文字も浮かび上がってくると感じています。

――この印象的な作品が展示されることで、大きな影響があるでしょうね。

タイムズスクエアの巨大スクリーンに自分の作品が映し出されることは、とてもインパクトがあることだと思います。この象徴的な場所は、世界の人々のイマジネーションの集合体として重要な意味を持っています。とてもシュールでマジカルなものになるでしょう。NFTをよく知っている人もあまり知らない人も、作品についてじっくり考え、そこから自分なりの意味を引き出してもらえたらと願っています。

――ちなみに、KalenさんはNFT.NYCには参加しますか?

参加予定です。スピーカーとしてNFTの詩のギャラリー「theVERSEverse」を共同設立者2人と共に発表します。3人で1年間、密に協力して作り上げたもので、ニューヨークで初めてみんなと直接会えるのをとても楽しみにしています。滞在中はこの他にも私の活動に関わる予定がいっぱいで、今までオンラインでしか会話していなかった友人たちとようやく会えることがとにかく楽しみでなりません。

Kalenさんのプロフィール画像

■自分が納得できるコンセプトを考えることに、最も時間を費やす

――NFT.NYC について教えていただき、ありがとうございました。続いてご自身のアート全般に関してですが、Kalenさんは言葉・文学を扱うアーティストとして注目されています。作品の特徴や制作環境について教えてください。

私の作品は文学的、芸術的にさまざまな形をしていますが、特徴として挙げられることは「コンセプチュアリズム(作者の意図や思考など観念的な側面を重視する)」「言語(文章や文学)」「CryptoまたはNFT」の3つです。

あるテキストを文学作品とするのか、それともテキストベースのアートワークとするのか――カテゴリに縛られなくなったとき、どのようなアートが生み出されるのでしょうか。私は文筆とアートの境界を探り、その境界線を消すか、曖昧にするような活動をしているといえます。

アーティストとしての私の成長にとって最も重要なできごとは、ビジュアルアーティストでありミュージシャンでもある夫、Julien Silvanoに出会ったことです。夫とはいつも密接に連携していて、コンセプトを最大限に意味のある表現にできるよう助けてもらっています。

私の作品に最適なビジュアルを考えるのも、彼が手伝ってくれます。彼は私の作品に欠かせない存在で、今後はより正式な立場で一緒に仕事ができるような体制を整えているところです。

■NFTの可能性に興奮し、言葉や言語を媒体とするクリエイターに

――NFTに興味を持ったきっかけや、最初に提供した作品について教えてください。

NFTを作り始める数年前から暗号資産(仮想通貨)については知っていましたし、分散化やブロックチェーン技術が持つさまざまな社会的、政治的、経済的な意味合いにも深い興味がありました。しかし当時は取引や金融に関するものが多く、あまり興味を持っていませんでした。

しかし、2020年に夫と一緒に、CryptoアートとNFTについて知ったとき、このムーブメントとその可能性にとても興奮し、すぐに飛び込みました。文章や文学に愛着を持っていたので、2021年のはじめに、言葉や言語を媒体とするクリエイターとしてNFTシーンに参入したのです。

私がmintした最初のNFTは、ブロックチェーンの構造を模した「Few Understand」というマイクロオートフィクション(架空の自伝)シリーズの一部です。ブロックチェーン上の各ブロックには、前のブロックの暗号ハッシュが含まれていますね。Few Understandの各ブロックは、私の人生から着想を得た非常に短い自己完結型の物語ですが、あるブロックの最後の文が次のブロックの最初の文になっています。

Bitcoinブロックチェーンの最初のブロックには、New York Timesの見出しが記されていました。Few Understandシリーズのブロック0にもその日のNew York Timesの見出しについて言及しています。また、Bitcoinの最初のブロックが取引を含まないことと同様に、Few Understandシリーズのブロック0が売りに出されることはありません。

――その後のNFTアーティストとしての活動をお教えください。

私の最初のコレクターはNahikoというフランスのハッカー・アーティストで、彼は私の作品を買い、ソーシャルメディアでシェアするなど、私を信じてくれました。それだけでなく、彼の「YP11.31という素晴らしい作品にテキストの提供を頼んでくれたことにも感謝しています。

このコラボレーションの後、私は「12」という大きなCrypto文学のコラボレーションプロジェクトも実施しました。オンラインでの謎解きイベントのようなもので、新しい暗号ウォレットを開き、そのウォレットが生成するシードワードを使って詩を作りました。そして、NFTのアンロックコンテンツに、すべての単語を正しい順序で見つけるためのヒントを追加しました。

Cryptoアーティストの友人12人にNFTを作成してもらい、このウォレットに転送しました。シードフレーズを見つけ、ウォレットをアンロックした「12」の詩のコレクターは、中のNFTをすべて手に入れることができるというものです。これは本当に楽しいプロジェクトで、協力者やコレクターの皆さんもとても楽しんでくれました。

昨年は、Etherpoems(インフルエンサーのArtchick氏が率いる画期的な詩の集団)の一員となり、いくつかのCrypto芸術コミュニティにも参加し、友人の詩人たちとNFT poetry galleryを共同設立しました。ほかにも、オンラインやリアル店舗の展示会に出展したり、リスボンでのNFTのイベントにスピーカーとして参加したりしました。

CryptoアーティストのためのDiscordコミュニティ「Crypto Writers」(@CryptoWriters_)も立ち上げて、多くの優秀なアーティストや作家と出会い、互いに学ぶ場としています。現在、数百人のメンバーがおり、チームと協力してTwitterスペースやポッドキャストを主催し、新人を歓迎するなど、コミュニティを盛り上げています。

私はこれらの活動すべてにおいて、自分の芸術的なプラクティスを探求・成長させ、文筆と芸術の創作の過程を楽しんできました。

■ コミュニティに参加し、自分がワクワクすることを見つけよう

――NFTアートシーンの良いところはなんでしょう? 一方、改善すべき点はなにかありますか?

Cryptoアートシーンは誰にでも開かれているのがいいですね。素晴らしいコミュニティがあり、分散化の精神はとても大切です。アーティストや作家に力を与え、スマートコントラクトによってクリエイターが二次販売から利益を得ることも可能です。

非常に速いペースで物事が進むので、早く成長できる可能性があり、多くの機会から恩恵を受けることができますが、一方でついていくのに疲れることもあります。また、金融市場とも密接に結びついており、裕福なコレクターがある意味、センスの裁定者になっている側面もあります。それがアートの評価にどう影響するのか気になるところです。

――これから取り組みたいプロジェクトはありますか。

まだ公にしていませんが、現在、大きなオンチェーン書き込みプロジェクトに取り組んでいます。5つのステージからなるこのプロジェクトは、独自のスマートコントラクトを持ち、コレクターが執筆や制作のプロセスに参加でき、プロジェクトがうまくいけば、さらに多くのことができるようになる予定です。このほか、夫と一緒にWeb3でアートと言語の実験を目指す仕組みも作っています。

――文章にちなんだ作品に関する質問があります。たとえば、このインタビューのような記事はNFT作品になり得ますか? その場合、関係者と権利をシェアするようなこともできるのでしょうか?

はい。記事やインタビューは確かにNFTにできます。ニューヨークタイムズの記事がNFTになり、数百ETHで販売されたことがあります。著作権は従来の出版界と同じように機能しますが、出版社、編集者、ライター、その他含めたい関係者の間で自動的に収益を分配する共同契約でmintできます。

また、Mirrorという発信プラットフォームがあり、エッセイや記事をNFTとしてmintすることができます。このプラットフォームを利用して、ブログ形式の記事を書き、NFTとして販売している人も多く見られます。

――最後に、これからNFTアーティストになりたい人や、応援したい人にアドバイスやメッセージをお願いします。

私はこのシーンに新しく参加される方に、コミュニティに参加することを勧め、技術や精神について学び、何が自分をワクワクさせるのかを見つけるようお伝えしています。まずはTwitterのアカウントを作ってください。なぜなら、そこでいろいろなことが起きるからです。

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